文房 夢類
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壺猫

文房 夢類
September 2018

犬の力を借りる

地域内で自由に暮らしている猫たちとの付き合い方を考える中で、共に仲良く助け合い、気持ちよく暮らす方法として庭をテリトリーとして守ってもらう方法を考え、実行しています。
この考え方は、無から発生したものではなく、あるシンポジウムで行われた長い討論から学んだものです。それは、何年か前に山梨県富士吉田市にある、山梨県環境科学研究所で開かれた、農地を荒らすシカ、イノシシの被害と対策についての討論でした。関連した問題が数多く討論されましたが、私には、この部分が興味深く、役に立った部分です。
発言された方々は、研究者のほかに生まれる前から当地に生きてきた現場の方々も多く、誰もが時間をかけて話してくださったので、時の経つのを忘れて没入したことでした。
問題は農地と害獣の攻防ですが、電線を張り、通電しようが、高いフェンスで囲おうが、抜け道は作られて出入りされてしまう。研究所の方が観察したところ、鹿の跳躍力は想像以上で云々、とフェンスの高さを吟味する話題になった時、現に畑を持っている方々から、犬の話題が出ました。
昔は畑の被害は、あったが少しだった。今現在の被害は半端でない。イモ畑一面が、バックホーが入って耕したかと思われるほどにひっくり返されてしまう。一晩かかって親子連れのイノシシが芋を食べつくす。このような大きな被害が出る原因は、犬の不在にあるという主張でした。
今、飼い犬は放し飼いを禁じられています。犬も利口ですが、食べたい一心で農作物を狙ってくるシカもイノシシも、なかなかの利口者ですから、つながれている犬が追ってこないことを百も承知で侵入してきます。でも犬が吠えてくれていた時代は、気づいた飼い主が目を覚まして追い払うことができていました。ところが今は、地域全体が高齢化して中型、大型の犬が消えました。体力のある活発な犬を飼うことは、高齢者には大きな負担です。引きずられて転倒する危険もあります。気づいた時は、どこの家も小型犬ばかり、それも室内で暮らす可愛らしい犬たちばかりとなってしまいました。
犬の放し飼いを認めて貰えば、高齢者でも大型犬とともに暮らせます。食べさせて、ハウスを用意すれば良いのですから。自由な犬たちは足にモノを言わせて走り回り、ご主人のテリトリーを守る喜びを満喫するのです。これならヒトもイヌも大喜びです。地域限定で放し飼いを認めたら、ずいぶん楽になるだろう、とは私の夢ですが。
現実には、高齢化と並んで幼児から中年までの人々が自然から隔絶された感覚になりきっています、歩道に1匹のカマキリがいただけで跳びのき、振り返り眺める有様。こんな感覚の若いもんが、自由に放されて走り回る犬たちを見たら110番するんじゃないでしょうか。

庭は、誰のテリトリーか

戸建ての家の庭は、誰のテリトリーか。もちろん、住んでいる人のものと思っているでしょう。
が、それはヒト社会の話で、犬や猫たちにとっては別の世界、ヒトには関係のないテリトリーを作って暮らしています。
千早が生きていた頃は、南のガラス戸に出入り用のフラップを付けてあり、室内と庭を自由に移動して暮らしていました。だから千早にとっては、室内と庭が彼女の守る領域でした。強烈なテリトリー意識がありました。
千早が亡くなった時フラップは閉じられ、庭は自由空間になりました。犬がいる家の庭には猫は絶対に入れません。猫の侵入を許す犬がいるとしたら、よほど猫好きの犬か、猫と共に暮らす犬かであり、さもなければとんでもないバカ犬です。
千早のいない庭には、多くの猫たちが集まり、タヌキもやってきました。みんな仲良く穏やかで、それはそれで楽しいのですが、猫の繁殖力は相当なものですから放任はできません。
結局、避妊したメロディのテリトリーと決めました。つまり、彼女の分だけの食料を与えて、庭を守ってもらうことにしました。これでメロディは住み込みの職を得た格好となり、自分のテリトリーとして庭を守ってくれました。
やがてメロディが歳をとってなくなり、今はマルオが彼女の後継として我が家の庭を他の猫から守ってくれています。安定させるコツは、マルオの分だけの食料を与えることです。彼にとってみれば、生活がかかっているから真剣に守ります。
猫が嫌いな人は大勢いますが、糞をするから嫌い、と怒り、追い払うしか能がない、猫よりバカな人たちです。我が家の近所には、棒を振り上げて追いかける獰猛なヒトが複数います。猫はヒトを仔細に観察して生きていますが、猫嫌いの彼らは、猫を観察する気もなく、能力もない、猫に劣る生き物ですから勝負になりません。
仲良くして、手伝ってもらって、折り合って暮らせば双方がニコニコしていられるものを、排除し、嫌うのです。
正当な怒りは強い精神から生まれますから、心根がまっすぐに立ちますが、負の感情を発し続けることは健康によろしくない。
憎み、嫌う感情を顔に表して睨んだり、追い払ったりを繰り返していると、いやでも人相に染み付き、これは洗っても落ちません。
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