文房 夢類
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壺猫

文房 夢類
September 2020

台風と山火事

台風10号は恐ろしかった。前もって強い警戒のメッセージが行き渡っていたために守りは固かったが、それでも凄まじいエネルギーが九州を蹂躙していった。海ではたくさんの牛を積んだ船が転覆し、陸地では土砂災害で家も人も失われた。
一方、カリフォルニアの山火事がものすごい。空を覆い尽くす赤い煙、市街地に迫る炎。たくさんの映像が毎日克明に伝えられて、隣町であるかのように迫る猛火に胸つぶれる思いがする。今回の火事の原因は落雷によるものだという。消失する樹木の数、桁違いの消失面積を思う。
covid19が今、 世界中を蹂躙しつつある。各国はそれぞれの方針により防戦、ワクチンの開発も協力して努力しているように見える。コロナウイルスは恐ろしい。恐ろしいが、たち向かい防ぐ人々の姿の、なんと好ましいことだろう。
まるで小学生が言うようなことを言い、バカかもしれないが言いたい。まことの大馬鹿だが言いたい。
戦争のための兵器を作る費用を、台風、山火事ゼロに向けて費って貰えないだろうか、地球規模で。地球一丸となって。人間て、その気になると知恵が出るものだ。専門的知識を微塵も持たない人でさえも、思いつきは出るものだ。
月だ火星だと、飛んでいける人類が、地球上の波風、出火に対して原始的な手段でしか対処できず、なすがままに翻弄されるなんて、ありえない話じゃないだろうか。これって、ものすごいバカじゃないか。

実は私も

実は私も、そう思っていた。という人になりたくない

第二次世界大戦は193991日から194592日の6年間。世間風には1941128日の真珠湾攻撃の日から1945815日の4年間足らずの期間だった。もう一つの見方もある、それは満州事変(1931年)から始まったとする数え方で、これだと14年間となる。敗戦国日本の実感としては14年間だろう。
私にとって、この期間は永遠とも思える、とてつもない長い日々だった。この長い戦争の間の影響は、筆舌に尽くせるものではない。私という人間の人格形成に、この期間はがっちりと組み込まれており、外せるものではない。
この戦争が負け戦に終わった時、多くの日本人は言ったものだ、実は、日本は負けると思っていました、私も。
戦時中、日本人のほとんどは、そうは言わなかった、負ける、なんて言わないどころか、思ってもみなかった。それどころか負けたと知ったときでさえ悲涙にむせんだのだ。
軍国主義であった当時、負けるよ、などと発言したらただでは済まなかったろう。思っていても口をつぐんでいた人もいた。隣組の集まりで、それを口に出してしまったばかりに密告されて憲兵に捕まった人もいた。この話題は、のちに隣組の話の時にむし返すつもりです。
しかし、それにしても聞いていて気持ちの良いものではなかった。大声で鬼畜米英をやっつけろと叫んでいたにもかかわらず、実は、なんて言い出すありさまは醜かった。後出しじゃんけんのような発言だけはしたくない、と痛切に感じた。

今、私が感じていることを書きます。後になって「いやあ、実は私もね、日本はダメになるなって、思ってたんですよ」と言いたくない。
日本という国は、衰えてゆく方向を向いている。このままブレーキをかけなかったら、消滅はしないまでも底辺国となる。
こればかりは、ほらごらん、言った通りにダメになっちゃったでしょ、となりませんように、立派に立ち直ることを心底願っている。しかし今現在は、これじゃダメになるな、と感じている。

データや数字ではない、私よりも年下の日本人の多くが死んだ目をしているから感じる、絶望的な気配。
どうやったら立ち直ることができるかしら、暗澹とする。なんとか立ち直りたい。
こんな危機的な見方をするのは嫌だ。でも光が見えない。悪い気配が満ちてしまった。
安倍政権は、第二次だけでも78ヶ月続いた。この78ヶ月は、あの戦争の期間よりも長かったと感じる、そして、この国に与えた負の影響は、あの大戦よりも、はるかに根深く悪質なものだった。
国民から奪ったものが大きすぎた。希望・信頼・気概。これを失ってしまった。あの戦争の時と真逆だ、あの時は命と物を失った。残っていたのは希望だった。

今年に入り、特に5月ごろからは誰の目にも見えただろう、どんよりと光を失った目の安倍晋三が。周囲を囲む要人たちの、ねじれ、歪んだ表情が。
外交の安倍だと? 笑わせるな。バカ高い兵器を買わされ、大量のコーンを買わされ。言いなりになっていれば相手がご機嫌なのは当然だ。
北方領土も、やられっぱなしじゃないか。沖縄は、悲惨なまま放り出しているじゃないか。日本国民が拉致された。これを自国で解決できずに、どこぞのボスにお願いしただけだ、自分は衿にリボンのバッジをつけただけじゃないか。さらわれたものを取り返せないのは、簡単に言えば弱いからだ。
一つ一つ書き出すのも忌々しい。
安倍政権がしたことは、法律を、規則を、次々と我欲のままに変え、三権分立を破壊し、嘘を吐いて知らん顔、都合の悪いことは握りつぶす。
基本の教育をなおざりどころか腑抜けにし、国の土台である水、健康をも崩した。保健所の数を、どうして40%以上も削減したのか。減らさなかったら、今回のコロナ対策も、随分違ったものになっていたはずだ。
力こぶを入れたのは株価だけじゃないか。大企業優先、株価を守り、弱小大多数を踏みつぶした。
何よりも恐ろしいことは、この腐れ姿を国民に見せつけたことだ。白々と嘘を吐くライブを国民全体に、広く、日々、見せつけてきたのだ。
忖度とごますり、大樹の陰に巣食う集団が、桜、桜、と花見に浮かれている姿を、映像とともに嫌というほど見せつけた。あの映像の中に見た芸能人の誰彼の笑顔は、人々の記憶に焼き付いたことだろう!
今時、芸能人の数と893の数が同数になっていると聞いた。両者ともに(p音)に必要とされていると聞く。こうした風評が南風北風に乗って流れている。


結果、国を人を、信じることができない日本人を生み続けている。法律に頼っても守られないことを身体で学んでいる。
敗戦時の感慨、「軍国主義は終わった、負けたが戦争は終わった」のように、時代の区切りを今、強く感じている人々がどれほどいるだろう? それとも第3次安倍内閣が続くとでも?
腐れメディアの数取りに乗って、次は誰だ、と興味本位に眺めている、あるいは、どうでも良いと背を向けている。
あの戦争の悲惨な傷よりも、はるかに深刻な影響が、大切な若い人たちの心を、見えない霧のように覆い尽くしている気配が見えないか。
AI
は、気配を計測できるだろうか、言葉にもならぬ気配を。
敗戦の時は、想像を絶する死者、想像もできない飢餓、貧困からもたらされる病を抱えた人々が、老人も子供もすべてが、明日の日本を作ろうという気概と希望を持っていた。
安倍政権が2度目の放り出しをした今、さあ、希望を持って進もうと、誰が思うだろう? 
この大きな傷が見えていない、やわらかでおとなしい人々。
日本全体が深刻な、深い傷を負っていることを自覚できていない人々も、コロナのために夜遅くまで飲み会ができないことを残念に感じることはできる。
コロナで途絶えた収入の道が再び開けたら、自粛が緩んで夜遅くまで友達と会えたら、とりあえず目先の不満はなくなるだろう。
おぞましい安倍晋三と同じ眼の色を見せている静かな日本人たち。
一人ぼっちになりたくない、みんな一緒にいよう、やさしく、たがいに寄り添いましょう、そして? それだけだ。
私は不安だ、恐ろしい。
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