文房 夢類
文房 夢類
myExtraContent1
myExtraContent5

壺猫

文房 夢類
September 2017

ストーンヘンジ

この夏のこと、夏至の日にストーンヘンジが賑わいました。世界一有名なストーンヘンジ、イギリスのソールズベリーにある環状列石に集まった人たちが巨石群の周りで日の出を待っている、巨石のどこから太陽が昇るかという興味らしい。
イギリスのストーンヘンジの向きは北東と南西を向いて開いているそうで、これは鬼門と裏鬼門の方角にあたります。春分と秋分には、太陽は真東から昇り、真西へ沈む。洋の東西を問わず、なぜ真東真西より、北東、南西をマークするのでしょう。
大昔の人たちが何を考えて、こういうものを作ったのかと推測が続いて決定打は出ないみたいですが、これは全部棚に上げておき、自分で石を配置した経験から、環状列石や、日本にも散在する不可解な石の群れを作った人々の気持ちを考えてみようと思います。
私が作ったのは、地面に並べた石ころという単純素朴なものです。自分のために、自分が欲した配置をデザインして製作した石庭とも呼べますが、大層なスケールのものではなくて、ささやかな庭先の箱庭のようなものです。
肝心なことは、眺める庭ではないこと、使うための場所と空間であること、自分自身が本当に必要とする配置であることです。つまりストーンヘンジの解釈は、そういう心の立ち位置に立ってみて初めて見えてくるのではないでしょうか。

正方形の庭を二つ作った、まずはその一方を紹介しましょう。
正方形に区切った中央に丸石があります。これを中心として四方に石が並びます。真上から見ると十文字に見える、この方向が東西南北です。ほぼ正確に真南、真東を向いて立つことができます。周囲は隙間なく小型の丸石で埋めて、隙間には白い砕石を詰めてあります。
石は全部花崗岩なので夜も白く見えます。夜に地面が白いということは侵入者が入りにくい。目立ちますから防犯になります。さらに防犯灯を設置しているので猫一匹でもわかります。雑草は1本も生えず、地下に有孔排水管を通しているので排水が良い。
この庭は高齢者向き庭であり、草むしりや庭木の剪定から完全に解放されて心理的にも負担がゼロ、そろそろ草むしりしなくちゃ、なんて考える必要がないのです。この庭に出て歩く。姿勢を正して裸足で歩く。これが健康法です。
もう一方の正方形も紹介しましょう。
こちらの正方形は9つに分割されており、その9区画に、それぞれ丸石が配置されています。この石もまた花崗岩ですが、区画ごとに石の数が違います。まず1列目が6個、1個、8個。2列目が7、5、3。3列目が2、9、1と並びます。
そう、これは魔方陣の配置で、縦、横、斜めの石の数の合計が15になるものです。実はこの配置こそが陰陽五行思想、風水、八卦など東洋思想の根幹に位置する重要な座であり、私には欠かせない世界です。この石の周りにも白い小石が敷き詰めてあり、ここもまた運動場なのですが、一方と違う点は中央にベンチブランコが下がっていることです。
このブランコもまた自分自身のためのもので、しばしばブランコに揺れながら昼寝をし、読書をし、猫を抱いて揺れている次第。なぜブランコなのか。精神世界の中央で緩やかに揺れる座、これが胎内感覚とつながる命の根源である故です。胎内に眠る感覚から生まれる発想が私の夢類、と言いたいのですが。さてどんなものでしょうか。
昔からこんな庭であったはずもなく、四、五十代の頃は、金柑と柚子が実り、ブルーベリーがザルいっぱい採れてパイを焼き、桃ノ木まであったのですが、年齢とともに庭もまた移り変わりました。
myExtraContent7
myExtraContent8