文房 夢類
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壺猫

文房 夢類
February 2019

横書きの日本語

ウンベルト・エーコ(Umberto Eco)の小説『女王ロアーナ、神秘の炎』(La Misteriosa Fiamma Della Regina Loana)和田忠彦訳 岩波書店 2018年発行を読み始めたところだ。
『薔薇の名前』が映画化されて有名になった人で2016年に亡くなられたが、小説は、この世界的知識人の仕事の一端に過ぎない。
それはともかく、この訳本は横書きで左綴じだ。特に数字や英文字が多いわけではない。
文芸書は従来縦書きで右綴じ、つまり本を開いて右側から左手へ読み進むものというのが常識だが、この本は横書きだから左上から右下へと読む。
横書きの日本語の小説を、恐る恐る読み始めているところだが、これは良い、これで良い、という思いが湧いてきた。なんか嬉しくなってきた。
という次第で、昨日は図書館で子どもの絵本をつぶさに眺めてみた。文字の多寡にかかわらず、どの本も自由奔放で、思い思いの作り方をしている。横書きの物語なんて、たくさんある。
そういえば高校生の使う日本歴史の教科書も横書き左綴じだ。
私がキーボード操作で、横書きの画面で文章を書き始めてから何年になるだろう、何十年も経っている。十何年ではない。おかげで印刷した400字詰の原稿用紙が余ってしまい、雑記に使っても使い切れない有様だ。
横書きで奈良時代の平城京風景などを記し、これを縦書きに変換している。いったい誰のために、何のために縦書き変換をしているのだろう。縦書きの場合、年号などの数字が厄介なのだ。
書き手によっては、パソコンの画面を縦書きに設定して縦に入力している人もいる。もっとすごい人は、画面に原稿用紙のマス目を表示して、1文字、1文字、マス目に入れている。
さらに、もーっとすごい人は、今もって原稿用紙にペンで書いている。これでないと文章が違ってくるという。
こうなると味覚的感覚の世界だと思うので口を出さないが、世の中は前を向いて進んでゆく。
うちうちで好みのままに暮らすのは結構だが、せめて公文書は西暦にして、新聞も横書きにしてほしいと思う。

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