文房 夢類
文房 夢類
myExtraContent1
myExtraContent5

壺猫

文房 夢類

季節の食べもの

駅前にある地元農家の野菜売り場に筍が山積みされた。採りたての、まだ土が湿っている筍は軽トラからおろしたばかりだ。
スーパーではそらまめ、セリ、新玉ねぎなどが並んで、眺めた時点ですでに嬉しさいっぱいになってしまう。
生きている楽しさは、好きな食べ物と共にあり。
幸せな食べ物は、やはり季節と結びついている野菜と果物ではないか。真夏のトマト、きゅうり。そしてスイカ。秋に実る柿と梨。特別の珍味というものは、誰彼と楽しむ材料としては良いのかもしれない、ひとりしみじみ珍味を味わう、なんて絵にもならない。
どこにでもある、土から生まれる平凡な菜っ葉が幸せ感を運んできてくれる。
でもまだ、今は四月なのだ、筍が出回るのは自然だけれど、どうして今頃キュウリが山積みなのか。なんでナスが本日の特売なのか。四つ割のかぼちゃが並ぶのか。頑固なことを言うようだが、何年たっても私は慣れない、違和感がある。
もう、旬のキュウリもナスもない。にんじん、大根、じゃがいもと一緒で、いつも並んでいる。レタスやもやしと一緒だ。かぼちゃやオクラなんて年中輸入されている。だから季節の野菜を楽しむのも、楽じゃないのだ。うっかりしていると楽しみ損ねてしまう。
量産できない、あるいは工場生産できない、需要が少ない、そのような片隅に置かれているものたちだけが、季節を運んでくれる。
「今日だけ来たのよ」「来週は、もう会えないかも」そらまめさんとセリさんが話しあっているような気がして両方とも買って帰った。
myExtraContent7
myExtraContent8