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壺猫

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笑いの種類

創作でもっとも高度の能力を必要とするのが、受け手に笑いをもたらすことである。怒りや悲しみを伝えるほうが容易いというと語弊があるが、一直線に万人の胸に飛びこんでゆく。しかし笑いは一筋縄ではいかない。笑い転げる人がいる反面、くそ面白くもねえ、とそっぽを向く者もでる。笑いを作る芸術家を、私は花祭りのひな壇の最上段に飾りたい。笑いを醸し出せる俳優はすてきだ。そういう意味で選ぶと、男雛はフランスのルイ・ジューべ。女雛はアメリカのマリリン・モンロー。いまどきルイ・ジューべを知る人は少ないだろう。お二人とも故人であるが、芸術は永遠です。
と、これは枕で、今日話したいことは、笑いについての大発見についてです。『社会脳からみた認知症』というタイトルの伊古田俊夫先生の著作のなかに、笑いの分析を見つけました。この本は、あらためて読書評で紹介しますが、私の書架にある何冊もの笑い分析本とはまったく異質で、しかも納得の神髄があります。
認知症になると笑わなくなるということから、笑いを追っている。人が笑うためにはユーモアを理解することが必要で、落語を聞いて笑うのもおかしさが分かるから。一方、ユーモアに関係ない笑い、それは自虐的な笑い、作り笑いなどで、この笑いは、脳の中の別の部分、運動野(随意運動中枢がある)を使っているというのです。ユーモアを理解して笑うほうは、前頭葉など別の2カ所を作動させていて、運動野ではないから、自然とこみ上げてくる笑いだといいます。笑いは不眠症がなおるし、免疫力も強くなり、疼痛の緩和にも役立つのだと、書いてありました。
洋の東西を問わず、笑いの分析者は数多く、しかしそのすべてが文人によるものでした。脳の世紀と呼ばれる今世紀に入り、ますます進む脳内探検は、笑いの分野へも踏み込んできたのだという感慨を持ちました。
それで思い出しました、度重なる失意の入院生活の折々に、私が心血を注いでいたことは、回診の医者たち、巡回の看護師たち、掃除の係など、ベッドサイドに現れる人たちを短い一言で笑わせることでした。瞬間芸。よくまあ、これほど苦々しい顔になれるもんだ、とこっちも口がへの字になりそうな大先生が、片頬でかすかに漏らしてしまう笑みに、その日が猛烈嬉しくなってしまう。友人の夫が外科の勤務医で、陽気な患者は傷の治りが早い、と言っていたそうですから、陽気がどうであれ、また雪が降るにしても、良質な自然に湧く笑いとともに生活したいものです。
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