文房 夢類
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壺猫

文房 夢類

しつけ 二題

私は国民学校に入学した世代です。「修身」という教科書があり、表紙の見返しに「教育勅語」が出ていました。これを組全員で毎日、大声で読み上げました。組とは、今のクラスのことですが、英語は敵の言葉であり、使ってはいけないと教えられていました。でもラジオはラジオと言っていましたから、いい加減なことでしたが。さらに、この教育勅語を暗唱しました。チンオモーニ、ワガコーソコーソ。何のことやらわからんチン。
これは一種の「しつけ」なのかもしれません。ダンスの振りを覚えるのと一緒で、とにかくできると先生が褒めてくれる。褒めてもらうと良い気持ちになる。だから暗唱します。これをやらされていると自由発想がせき止められて、鋳型に流し込まれて固まってしまう気持ちの人間が出来上がるような気がしますが、いかがなものでしょうか。
当時、国民学校で叩き込まれた中国人、韓国人に対する偏見の衣を自ら脱ぎ捨てるために、私は相当長い年月を費やしました。脱出のきっかけは我が子たちでした。伸びのびと育って偏見の曇りのない子を見てショックを受けたのです。
いったん鋳型に流し込まれて冷えて固まった鉄を、再び身動き自由な液体に戻すことは容易なことではできません。柔らかい心で生まれてくる子供たちの心を、有無を言わせず型に押し込める行為は、悪魔の仕業そのものです。
森友学園という大阪の幼稚園が国会の問題として取り上げられている今、タイムスリップしたかのように「教育勅語」を暗唱する園児たちの姿をテレビで目にした衝撃は、言葉では言い表せないほど強く、おぞましく、過去の亡霊に出会った気分になりました。二度としてはならないことだと思います。
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