文房 夢類
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壺猫

文房 夢類

図書館めぐり

私が住む地域が二つの自治体の境界近くにあるために、両市の図書館を利用している。図書館で読書をして過ごすのではなく、リクエストした図書を受け取り、返本する利用法だ。持ち帰ると、まず表紙のクリーニングをする。読みはじめてからは、書き込みを見つけると消す。また破損箇所を見つけると、修理して返す。「ノド割れ」と言って、ページののり付け部分が剥がれている本は、繰り返し読まれてきた本に見かける破損で、私は、これを修理するのが、自慢みたいに聞こえたら、みっともないけれど、上手なのだ。のり付けして一晩、重石をする。翌日には、どこを修理したか、自分でも分からないくらいに、きれいになっている。図書館のカウンターに返すときは、知らん顔をしている。一度だけ、伝えたことがあった。それは他館から運んできてもらった本で、しかも開架棚ではなく、書庫に収納されていた本だった、図書館員にそっと伝えた、「この本、絶版です。古書市場に1冊、出てますけど1万8千円です。大事にお願い……」。これが普通なのか、私が利用する図書館の特徴なのか、頷いてくれたけれど、顔も上げなかった。私は歩数計のカウントを楽しみに歩きながら独り言をいう、「いいさ、いいんだよ」すると本の声が聞こえた、「まああぁぁ! 久しぶりに書庫から出して貰ったなぁ!」
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