文房 夢類
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壺猫

文房 夢類

アリの巣

庭にアカアリの巣があり、益々世帯が大きくなってきた。狭い庭なので彼らがいる場所はない。思い切って強制撤去に踏み切った。気配を察知して攻撃してきた。3ミリもない小さな身体で無謀にも噛みつきにくる。地中の白い卵は大量で、成虫と同じ3ミリはある大きさ、彼らは、これを安全な場所に避難させようとして運び出しにかかった。ここからが勝負の分かれ目、わたしは卵だけを狙わずに、周辺の泥も大きく取ってポリ袋にそっと移した。さらに右往左往しているアリたちをちり取りに集めてポリ袋に放り込んだ。
初めての試みだったから、これで逃げ出されたら袋の口を縛り、それでもダメだったらさらに大きな袋に入れなければ、と考えてながら見ていたら、なんとアリたちは袋の中に落ち着いており、逃げだそうとはしないのである。右往左往のアリたちは、いままでと変わらぬ姿で並んでいる卵に安心したらしく、周囲の修復にかかっていた。ここが我が家と思っているらしかった。次のゴミ収集の日になったら激変する運命を知るよしもない。
私は考え込んでしまった。人間社会でも、こんなことがあると思う。自分の乗っている地球を実感しない、日本だけを念頭に生きていて世界の出来事に、いまひとつ関心が薄い。小さな島国の日本、その国内のことであっても、自分とは関わりのないニュースとして見つめ驚くばかり。
もちろん、事件事故災害のたびに各人が走り回る必要もないが、出来事を捉え観る視野がポリ袋の内側に留まっているのではないかと思うのだ。
自分が心地よくいる部屋が、いつのまにか大きくすくい取られて、思いもしない方向へ運ばれてゆくようなことが、ありはしないか。もしも、そのような大きなシャベルを扱う者がいたとする、それは何者なのか。
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