文房 夢類
文房 夢類
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壺猫

文房 夢類

本のタイトル

本には題名がある。これは中身の代表者の役目をしている。的確で簡潔。私はこれが好ましいし、望ましいと思っている。本の感想を書いてみて感じたのだけれど、中身とずれている、そぐわない題名がある。最近、といっても数年から十年以上にわたることだが、増えているように感じる。外国語の書物の翻訳本では、原書につけられた本来の題名から遠く離れたタイトルをつけていることも屡々見受ける。
もう一つの引っかかりは、副題をつける本が多く、これは増殖中、と言いたくなるほどの氾濫だ。内容との縁と所縁(ゆかり)はごくわずか、単に流行言葉である何文字かを正式題名として置き、副題として、だらだら、ぐだぐだ、中身を説明する。何やってんだ、と思う。出版社の販売戦略が根にあることは言うまでもないが、編集者と打ち合わせのときに著者が同意しているわけ? などと考えてしまう。ひどいものは、なんと表紙全体、ベタで内容を列記していた。これなら表紙を見ただけで開く手間が省けるというものだ。
 他書のことを、あげつらう資格は私にはない。私自身も、これから出版する予定の小説本の題名に副題をつけることを、今から決めているのだから。「薬子 ー藤原種継の娘ー」という題名を考えている。薬子に藤原を被せたくない。しかし種継が手塩にかけた妖艶、有能、そしてファザコン娘なのだから、これ以外に私は置く言葉を思いつかない。それなら、この一行まとめて、一つの題名と言えるか。いや、題名は、あくまで「薬子」にしたい。題名はむずかしい。
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