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壺猫

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世界遺産・富岡製糸場

群馬県の富岡製糸工場が世界遺産になり、大工場の写真や、解説を見る事ができる。蚕の繭から糸を巻き取る工程はわかるけれど、あまりにも整然として別世界の感じがする。私は高校に入ったばかりの頃、稼働中のこの工場へ行ったことがある。戦後のこと、父が送風機を設計製作する会社を創業、経営していて、工場の換気設備を作ることになった、まずは現場を見ようと訪問したときに、私はお供でついていったのだった。機会のある度になんでもみせてやろう、という気持ちがあって、連れて行ってくれたのだと思う。父が打ち合わせをしているあいだ、私は工場の中、女工さんたちの生活の場、食堂などを見せて貰って過ごしたのだが、この時の印象が非常に強く、忘れられず、いまもって目の前に出てくるのだ。胸一杯になったことは、自分と同じ年齢前後の女性ばかりが働いていたことだ。湯の入ったボウルの中に繭がいくつか泳いでいる、これの糸口をつかまえて機械に掛ける、立ちっぱなしの作業。彼女たちの指は、10本とも真っ白だった。両手指を絶え間なく働かせなければ間に合わない、真っ白の指は、ふやけきった指であった。手袋のない時代。もうもうと立ちこめる湯気の工場内は息苦しい。独特の、強い繭の臭いで息が詰まる。当時の私は、結核にかかっていて登校はしていたが、体育の授業はできなかった、弱く、また暗い時代だったこともあり、この環境で少女たちが肺結核に冒されて行った状況を、自分の身体で受け止め、さらに高校生であることを申し訳なく感じた。畳の部屋に数人で寝起きする。食堂で食べるご飯。食堂の片隅に蠅帳があり、食べ残しのお皿が並べられていた。それは小皿に一口か二口分の煮付け、2枚のたくあん、そういうおかずを次の食事の時まで、大切に蠅帳に入れているのだ。親と会社の打ち合わせによって就職している少女たちは、現金を見たことがない、という述懐を、これは山梨で聞いたことがある。そんなに昔のことではないのです。
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