文房 夢類
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壺猫

文房 夢類

猫が扉を開けるとき

富士は室内より戸外を好む。一日のうちで活発に動きたくなる時間帯があり、散歩しようよ、と誘ってくる。ハルターを持つとドアのそばに走りより、背中でフックを留めて貰う。私はドアを細めに開ける。富士は隙間から表を観察する。ドアが開いたとたんに飛び出すことはしない。様子を窺って大丈夫安全だ、と見極めてから一歩踏み出す。犬は、こんなことはしない。跳んで跳ねてニコニコ笑いながら一気に走り出す。ネコの方が用心深い。半開きのドアから蚊が入ってきても、我慢をして富士が気が済むまで観察して貰う。富士だって私と暮らしていて譲ってくれる場面があるのだから、これでよいのだと思う。こういう本能的な動作を無理に止めさせることは、私は富士の幸せを奪うことだと思っている。
野生のリスは猫の比ではない用心深さだから、身を守るためには欠かせないことだ。トカゲだって富士に狙われていると察したとたん、10分20分は序の口、長い間身を潜めて動かない。自分の命を守るのだ、何時間でも耐える小動物だ。
バングラディシュの首都、ダッカでの襲撃事件に衝撃を受けた。JICA関連の仕事で現地にいた日本人7人を含む22人が殺された。殺されて一生が断ち切られた。日本政府はドアの隙間から表の気配を伺っていたのだろうか、海外で働く自国民のために。
バングラディシュでは、ダッカから300キロ北のランブルで日本人男性が射殺された。これは昨年10月のことで、犯行声明が出されていたのだ。これはマークすべき事件で、継続して警戒すべきではなかったか。今回襲われた日は、断食月(ラマダン)の最終日だった。これは注視すべき危険な日ではないのか? このほかにも、現地ではもっと気配があったのではないか。丸腰で活動している日本人を守るのは日本政府の責務。今回、無念にも命を絶たれた人たちは、政府の力によって助かったかもしれないと私は思う。
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