文房 夢類
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壺猫

文房 夢類

女心

福島原発.......福1と略称が生まれた、この大事故について、8月6日原爆の日には、とくに思いが押し寄せて、式典の実況とともに1時間を過ごした。これから先、ますます福1が出てくるに違いない、今回はそれは置いておいて、昔の思い出を記す気になった。昔の「思い出」「女心」とでたら、このあとに来るのは「恋」。そう思うでせう。残念でした。はずれ、です。
ライターとしてプロダクションで仕事をしていた時代のこと、プロデューサーに取材に行ってこいと言われた。場所は新宿歌舞伎町、時は深夜。TVドラマ作りとは畑違いの方面の小説書きの男性に白羽の矢を立てたが、即座に同行を断られた。もうひとり、似たような男性を誘ったが、はっきり逃げられてしまった。軟弱な者どもである。単独で出かけたが、もともと生まれた地域から近い繁華街という認識なので気楽である。たいていの場所は歩き回った路地である。が、いつ何が起きてもおかしくない緊迫した空気が漲る澱みが見え、猥雑であり、きわめて美しいシーンもあるのだった。そして地方から物珍しげに訪れた男たちにとっては、そのような色合いは片鱗も見えずただ、金を出せば楽しめる明るい入り口が無数に開いている世界である。見せてよ、と私は言った、キップ売りの男は答えた、止めてやってね。男になら見せるよ、でも女にって、辛いんだよね。これだけ言ってもらえば充分だった。私は反省し、学んだ。痛々しい女心に触れた。キップ売りの男の心も、優しかった。みんなが、すべてを承知していた。承知しながら、生きなければならないことも分かっていた。私の心が抱きしめる女心、そして深夜の歌舞伎町。
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