文房 夢類
文房 夢類
myExtraContent1
myExtraContent5

壺猫

文房 夢類

世間知らず

乗り慣れぬ乗り合い車に乗る日々である。乗り合いバス、乗り合い電車。乗り合わせた人々を眺める。人々の姿が珍しくてしかたがない。あらゆるものが新鮮だ。
自分で運転していると、車の動きには注意を払うが、人間の服装や人相などは見ていない。だから服装はとくに興味津々で見つめてしまう。
学校の下校時間にバスに乗り合わせた。まだ黄色い声の少年たち。可愛いなあ。ウチの子、ついこの間、こんな年頃だったなあ。が、? と見直した。なんとネクタイをしているではないか。なに? ネクタイ? がきっちょである。ブレザーというのか、胸ポケットにワッペンみたいのがついている上着を着ている。グレイのズボン。まあ、かっこいいこと。何日かして、別のルートのバスに乗った。こんどのガキどもはダブルのジャケットだった。サイドベンツだ。合わせるボトムはグレンチェックみたいな品の良い柄物。ネクタイには細いえんじ色のストライプ。靴は黒革のスリップオン。
いつだったか、ニュースに「いじめ」事件がでており、ネクタイで締め上げた、と出ていたのを思い出した。読んだときは、どうしてネクタイが小道具に使われているのか理解できなかったのだが、なるほど、こういう子らが、こういう身なりをして学校に通っているのだ、とようやく納得した次第。
そこで女の子たちをそれとなく眺めると、どうやら制服は1種類ではなさそうで、いくつかの組み合わせができるように各種取りそろえてあるような気配を感じた。私は一枚のジャンパースカートで中学高校の六年間を過ごしたが、夜に寝押しをして、朝に畳の目の跡がついているのを着るのが習慣だった。背が伸びると裾上げを下ろして長くした。乗り合い車の中は、本を読むどころではない。
myExtraContent7
myExtraContent8