文房 夢類
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壺猫

文房 夢類

同じ道なのに

先月の「道の不思議」の謎を解こうとして、ふたたび歩いた。この道は猛スピードで抜けて行く車が多い、いわゆる抜け道であって、実は私も抜け道として利用していたのだ。もともとは、地元の人が歩くための道だし、畑も作れない斜面を曲がりくねり、上下しながら隣の村落へ通じる、そういう農道を舗装したものだ。私は、車を運転している気持ちになって歩いてみた。運転しているつもりの私は、道路の曲がり具合、登りか下りか、そして角々に立つミラーに注意を向ける。ミラーは大切だ、これがないと対向車が見えないのだ。この道路には速度制限の標識や、道路標識などは一切ないから、問題はミラーだった。私はオレンジ色のポールについているミラーと並んで立ってみた。そこには新しい景色、はじめてみる風景が広がっていた。ススキ、ヤブカラシ、クズ、エノコログサの斜面の下に屋根が見えた。一般の家ではなさそう、お寺らしい。行ってみようかな。どこから降りるのかしら。何本もあるミラーごとに、私は新しい風景に出会った。対向車を知らせる役目のミラーは、こんな風景を映していたのだった。車に乗せて貰っているときは、ゆとりをもって眺められるが、運転しているときは、脇見は禁物、必要なところを見定めながら走る。ミラーに車影があるか、ないか。それだけを確認していたから、ミラーの立つ場所に限って、周囲の景色を見ていなかったのだ。
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