文房 夢類
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壺猫

文房 夢類

多読はよいことか

カートを置いている図書館が増えた。借りるときに、書棚からカートに本を入れて貸し出しの手続きをする。ひとり10 册借りることができるから、親子連れで借りたら相当な冊数を運ぶ場合も出てくる。子どもたちは実によく読むらしい。本をたくさん借りて、返して、を繰り返しているので、そう思う。そんなにたくさん、つぎつぎに読んで行かれるものだろうか、と不思議な気持ちにもなる。
私自身の子供の頃とはくらべるわけにはいかない。時代が違う、というのではなく、事情が違うから比べることはできない。戦争中で、本が少なく、手に入りにくかったし、図書館というものの存在を、私は知らなかった。買ってもらったわずかの本を、繰り返して読むことになる。何度も読んだ本を、また開く。いまでも、持っていた昔話の絵本の、どのページにどのような絵があったかを覚えている。菅原道真の事を書いた絵本を持っていて、そのなかに、太宰府に流された道真が石に腰を下ろし、まわりにしゃがんでいる子どもたちに、長く細い棒で、地面に字を書いて教えている絵があった。いまも、道真の、その表情も覚えている。
図書館でふんだんに借りて、どんどん読んでは返して行く子どもたちには、本への渇望、飢餓感は、理解できないだろう。
食べ物と、書物は似ているところがあって、どちらも、ぞんざいにしてはいけない。どちらも、丁寧に扱わなければいけない。味わうことも似ている。毒なものは取り入れてはいけない。大食もよろしくない。
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