文房 夢類
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壺猫

文房 夢類

イルカより

和歌山県太地町で昔から行われている追い込みによるイルカの捕獲について、世界動物園水族館協会から止めて欲しいという趣旨の意見が出された。賛否両論あることは、以前から知っていた。しかし太地で捕獲したイルカを、国内の水族館のみならず中国や東南アジアの国国にも売っていたとは初耳だった。水族館は、伝統的な漁法を持っている太地から容易に入手できるために、繁殖による方法を開発してこなかったのではないだろうか。
上野動物園にオオタカが展示されている。このオオタカは傷ついて飛べなくなっていたのを動物園が引き取り、治療し、説明をつけて展示している。傷は癒えたが飛べず、野生に戻ることができないオオタカだ。私は、上野動物園の大きなケージの中でじっと佇むオオタカに会いに行く。彼はふたたび飛翔できないことを知っている。ほとんどの客が通り過ぎ、わずかの人が温かいまなざしで見つめる目を見る。種が異なっても生き物同志だ、温かさは伝わりあう。
 元気一杯な生き物を捕まえてきて、珍しいでしょ、可愛いでしょ、と見せるのは不要だ。まして「芸当」をさせるのは残酷だ。イルカショウなんか、止めてくれ。芸当させられている囚われの者。もしかするとヒト以上の能力、感覚を秘めているかもしれない者。サル回しのサルたちの寿命が短いのは、ストレスが原因なのだ。そんなことを言ったらサーカスもなくなる、というだろう。なくしてしまえ。ヒトは傲慢に過ぎる。パンダだって、法外な金額で借りてきて、何様かと思うほどの設備のなかに置かれている。あんなもの、原産国でのびのびしているだけで充分だ。見たくもないわい。
 水族館では見たこともないような珍種が勢揃いしているが、入手方法を公開できるか。誰に委託し、何処で捕獲した個体か。平均寿命は何歳で、現在何歳かも公開して欲しい。水槽内で死なせてしまう数多の生物たち。華やかな水槽の裏側、殺風景なコンクリートの作業場に充満している死に、私は我慢できない。いままでは、これでよかったかもしれないが、映像技術が発達した今の時代は、映像の方がより多角的に情報を受け取ることができる部分が生まれた。先日、上野の国立科学博物館で「大アマゾン展」を見た。水槽内の生きている魚、動物の剥製、そして映像の展示があった。ここで最も人だかりのしているのが映像+音声だった。そこには現地の森林があり、のびのびと動き回る動物たちがいて、声を上げている。解説が入る。目が離せない。剥製の鳥や獣の前では、眺め、名前を読み、次の展示へ移動するだけだ。水槽では、どこどこ、と隅っこにいる魚を探し、いた、と言って次の水槽へ行く。
3Dの展示が発達したら、密林の中や、大湿地帯の中を歩き回り、アマゾン川を舟で遡る映像の中に身を置くこともできるだろう。将来の動物園、水族館は、介護、治療、研究の場として大働きをして欲しい。
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