Site logo
Site logo
myExtraContent1
myExtraContent5

壺猫

Site logo

私の先生だった獣医師

猫の富士が健康そのもの、いたって元気なので動物病院の先生には長い間ご無沙汰してきた。一駅先の駅前にある動物病院は、老先生一人の土地の獣医先生だ。助手さんもいない。
久しぶりだから顔を見に行きましょう、と駅前通りをT字路へ出たら、そこにあるはずの病院が消えていた。シャベルカーがデコボコの泥になった病院の場所の中でアームを振り上げていた。私はぽかんとしてしまった。
老先生、なのだ。私と同じくらいなんだもの。
商店街の古い店を選んで訊いた。やっぱりお仕舞いになさったのだった。
それは良い先生だったんです。と残念がったら、みんな、そう言ってるよ、とお蕎麦屋さんの主人が言った。
お礼の手紙を書こう。シャベルカーのいる住所宛に手紙を出しても、郵便局は半年間は転送してくれるはずだ。
先生に伝えたいお礼の言葉を、お経のように口の中でつぶやきながら帰り道を歩いた、ありがとう先生。
先生は、カルテにまず、名前は? と言って千早の名を、富士の名を、書いてくださいましたよね。普通、患畜の名は二の次三の次で飼い主の名と住所を書くのですが、先生は違った。
体調を崩した高齢の千早を抱えて私が悩んでいる時、近所の犬友の女性が紹介してくれた先生だった。
犬を抱いて不安な時間を刻む気持ちを理解してくださり、あらかじめ行く手を示してくださったことを、感謝とともに繰り返し思い出すのである。
お陰で歩行困難になった時も、先生から前もって聞いて知っていたお陰で落ち着いて対処できたのだった。犬を診ていただき、同時に片割れの私も診ていただいていたのだった。

myExtraContent7
myExtraContent8