文房 夢類
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壺猫

文房 夢類

「別れのワイン」を思い出す

九条ネギと芝エビ事件から刑事コロンボ「別れのワイン」を思い出した。これはコロンボのシリーズの中でも屈指の上質な作品として有名な作品。ワイナリー経営者エイドリアン役のドナルド・プレザンスは,英国空軍で爆撃機に乗っていた人、ドイツ軍の捕虜にもなった劇的な半生の後に、演劇に復帰した。「大脱走」では身分証明書偽造の職人芸をみせる役をやっているが、なんとも見応えのある演技をする。秘書カレン役のジュリー・ハリスは、「エデンの東」でジェームズ・ディーンの恋人役で知られた女優さんで、24歳のディーンを相手に30歳のハリスは見事だった。「別れのワイン」で、具体的な状況証拠がないなかで、犯人、エイドリアンが自白してしまう根本原因が、カレンに強要された結婚に恐怖を感じて、刑務所行きを選んだというところにあるので、秘書カレンが、このストーリーの結末を納得に持ってゆくために重要な役割を担っていた。この女にこの先死ぬまで束縛されるのか、という恐怖。この恐怖を表現したジュリー・ハリスの演技が素晴らしい。
それはさておき、エイドリアンが、ワイナリーのワインが高温でやられてしまったことに気がつくシーンでは、コロンボが注文したワインが「フェレイラのヴィンテージ・ポート、45年」というとびきりの高級品であったが、品質の劣化に気づいたのは、ほかならぬ経営者エイドリアンだった。コロンボは、エイドリアンとワインに対して、最初から最後まで敬意を持っている、それも伝わってきた。こうしたすべての複合体が名作を生んだ。
ホテルたちの偽装の数々は、経営者が発見したものではなかった。それどころか、我と我が身を偽り、承知の上で偽装をしている経営者も多々あった。料理人に転化する者あり、解釈の違いにすり替える者もでた。もしかすると、新メニュー発表の際に、経営者も試食をしていたのかもしれない。そして何ネギだか何エビだか、社長にも違いが分からなかったのかもしれない。名前だけ立派にすれば、馬子にも衣装、高額でいけると決めたのかもしれない。この話題のあとに、さっそくスーパーに九条ネギコーナーができたので見物した。なんのことはない京都のネギのことだった。関西は葉ネギで、葉の部分が柔らかく、これを大切にする。バカバカしい限りだ。
もともと、ブランドと高額ぶりをありがたがる有象無象が、喜んで消費してきたのだから、どっちもどっちの結果と言えないだろうか。
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