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壺猫

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白内障手術後の影響

私が白内障になったのは40代だった。医者はストレスが原因で、元には戻らない、点眼薬を処方するが効果は期待できないと言った。出会う人の顔が見えなくなり、視力はコンマ1を切った。日光は視界を白転させた。不思議なことに風呂場の湯気の中では見えるのだった。手術をしたが、高度な技術の手術であるにもかかわらず負担は少なかった。眼帯を取ったとき、まず目に入ったのは若い女性、看護師さんだった。輝く笑顔でかがみ込んで笑っていた。あ、ほくろが。と私は言った、看護師さんの頬のほくろが見えたのだ。皆さん、そうおっしゃいます、と言って看護師さんは笑った。相手の目玉も見えなかったのが、小さなほくろが見えた。そのとき教えてもらったことを、私は繰り返し思い出す。
生まれたばかりの赤ちゃんの水晶体は透明で、澄んだ水のようなものだそうだ。年を経るにつれて濁りが生じる。中年になると薄茶色になるという。赤ちゃんの目に映る世界と、大人が見る世界は違うんです。そういう説明だった。私の見る世界は、手術後透明になった。一点の曇りもない世界を目にすることが出来るようになった。濁った液体によって閉ざされていた視力は、眼内レンズの力もあり、左右とも1,2に回復した。病院を出て帰る途中、植え込みの木を見つめた。これが葉の色。初めて見る鮮やかな緑だった。赤ちゃんの目と同じ、透明な目で見ている、そう感じた。手術後10年あまり経ったいま、視力は維持されて、なんら問題なく過ごしている。私は感謝とともに、この曇りのない目に心をこめて、あらゆるものを見よう、人間を見よう、社会を見ようと思う。
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