文房 夢類
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壺猫

文房 夢類

手ぶらで、帰れない

卓球の愛ちゃん。あの、よちよち歩きのチビちゃんの時から頑張ってきた福原愛選手が、今回のオリンピックで銅メダル、続いて結婚という幸せな時を迎えた。よかったねえ、おめでとう、とテレビに向かってお祝い。
取材に応えて、ホッとした、を繰り返している愛ちゃん。嬉しかった、の言葉が出ない。
手ぶらで帰さない。こんな言葉を聞いたのは、以前の水泳のときだったが、愛ちゃんの後輩選手も、同じ言葉を使い、試合前の意気込みを語っていた。海外の試合から帰国するときの空港での手ぶらの辛さを聞き、胸が痛んだ。
バカなことを思うもんじゃない、一所懸命にやった、それで十分でしょう、と声をかけたくなるのは、家庭であれば年寄りの役目かもしれない。しかし昨今、意気込みを通り越して重圧に変わってきていないか、案じられてならない。
1964年、東京オリンピックの時の男子マラソンで銅メダルを受賞した円谷幸吉選手を思う。日本人でメダルを手にしたのは、円谷選手ただ一人だったのだ。彼は、4年後には、もっと頑張りますと決意を語ったが、日本全国の、想像を超える重圧を受けて圧死した。この時の、言いようのない衝撃と悲しみが、今も胸を刳る。
リオのオリンピック前にも、メダルを取る、頑張ります、の決意が各所で語られた。メディアは、メダルの数を予想し、数える。そんなところにオリンピックの精神があるのだろうか。四年後には、たぶん東京オリンピックが開催されることだろう。そこまで生きているかどうかわからないが、一人でも多くの人が、バカなことを思うもんじゃない、と言って欲しいと願っている。
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