文房 夢類
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壺猫

文房 夢類

入センター 続

日記で学校に通う子供たちが環境に順応してゆく有様の感想を書いたが、高齢者が新しい環境に入ることについては、考えがまとまらずにいる。
そこで、私が当地に住み始めて出会った、この土地の高齢者のことを思い返している。
縁あって400年前から住んでいる家庭とお付き合いをさせてもらってきたおかげで、その家のお婆さんの暮らしぶりに接してきた。
お婆さんは耳がよくて普通に話し合うことができたからテレビドラマの話もした。あれは見ない、と「おしん」というドラマについてハッキリ言い、だって同じだったから見るのがつらい、と。
農家を継いだ長男のお嫁さんは、やがて立派な高齢者となったが、超高齢お婆さんの仕事には手も口も出さない。
お盆さんが近づくとお盆飾りの素材を集めて庭に置くが、それ以上は手伝わない。お婆さんの働きで盆飾りが出来上がると、訪れる近所の我々に自慢する、
お婆さんのおかげでねえ。見てくださいよ、お婆さんしかできないんですから。
もう一軒の家でもお婆さんが超高齢になった。孫娘が勤めに出るようになり、勤め先の縁で布切れを持ち帰る。
これを細く裁断して、糸を通した針を針山に何本も差しておく。お婆さんは縁側に座り、腰紐を縫う。お婆さんから見ると孫娘のお母さんは息子の嫁だ。
高齢の嫁さんは、色とりどりの腰紐を並べて言う、どうか貰ってやってください。私たちは縁側に斜め座りをして雑談をし、腰紐をいただいた。
お婆さんは傍にお菓子箱を置いていて、下校する小学生たちにあげていた。これはウチの子から聞いて知ったことで、だから子どもたちはお婆さんが大好きだった。
いま、お婆さんは二人ともいない。なんだか風邪みたいだって寝たんだけど。寝込むたって2日。3日だったかな、亡くなってしまって。とのことだった。
どちらのお婆さんだったか、お二人とも同じようだったのだと思う、これはデイケアセンターとか、特養や老人ホームなどができる前のこと、昔話です。
今は、地域包括センターなどの車が走り回り、送り迎えをしている時代。
なんとかセンターの中では、きっと楽しいことだろう、和やかな笑いがあることだろう。でも、必要とされているか、どうか。
こんなことを思うのは、現実を知らない夢みるおバカさん、なのかしら。
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