文房 夢類
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壺猫

文房 夢類

新しい車の夢

私は歩いているときに頭が活発に働く。だれでも同じかもしれない。知っているのはベートーベンで、彼は散歩が大好きだったという話だ。彼の散歩は、ちょっと独特であり、森の中をとんでもない早さでめったやたらと歩き回るのだそうだ、それも単独散歩らしい。これは散歩とは言えない姿に見えるが、これをすると曲想が湧くのだという。ベートーベン氏が頭にあるものだから、私も歩こうとする。しかし、しみったれた性分であるから、駅前に用足しに行くなどタダでは歩こうとしない。
歩きながら浮かんだのは、新しい車の白昼夢。私だけが持っている特別の車。燃料は核融合を使う。信じられない話だが、ITER(国際核融合実験施設)が無害のエネルギー源開発に成功したことを掴んだので、遠隔透視を使って入手したのだ。燃料源は海水である。トイレ、キッチン、ベッドなど生活空間があり十人程度は乗れるので怖がらないという約束が出来る人に限り乗せてあげる。自動操縦可能。激突しても、ボールのように弾み、傷つかない装置がついている。外気は遮断して良質の空気を生産循環している。いいなあ。
特徴は重力コントロール装置をつけていることで、これを作動させると駐車場の心配から解放されるのだ。つまり、空中に浮かべておく。乗りたいときはリモコンで誘導して地上に降ろす。実は、車で走れるが、本質は航空機である。水中、地上、空中、宇宙を自在に移動できるヴィークル。いいなあ。私は駅前をめざして気持ちよく歩き続ける。
私は、この車で自由自在に走り回り飛び回る。ステルスなんか真っ青になるハイレベルの忍者車で、レーダーなんて気にならぬ。どこを飛んでいても、空飛ぶ円盤に間違えられるようなヘマはしない。レーダーに映らないのだから、目視した航空機だけが大慌てをする程度だ。いままでは国内にくすぶっていたが、我が新車では地球一周なんて朝飯前なのだ。私はこみいった操作が嫌いなので、操縦は単純、おおむね音声操作。おまけに各国の言語を自動翻訳して送受信するから、交信は楽々。付け加えると、あんがいアウトロー的なので、出入国などは忍者モードで自由自在無断通過。
どこへ行こうかな。マッキンレーのてっぺんがいいな。マチュピチュというのをテレビで見た。あそこへ行ってみよう。アマゾンに行かなくては。忙しいなあ。日本海溝へもぐってこなくては。とりあえず地球面をくまなく回ることだ。国際宇宙ステーション訪問は、そのあとでよかろう。宇宙飛行士たちは船内を浮遊しているが、あんな子供だましは遊びだけにして、重力コントロール装置を起動させれば地上と同様の暮らしができるのだ。火星にも行きたいが、なにしろ年が年なので、あ、駅に着きました。
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