文房 夢類
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壺猫

文房 夢類

8月15日

8月15日。
玉音放送を聞いた直後、軒すれすれかと見えるほどの低空飛行の艦載機を見上げて凍りついた9歳の時の記憶が、どうしても8月の酷暑と重なってしまう。
天皇陛下の声のことを玉音と言い、天皇の顔のことを竜顔と呼ぶ。これが決まりだった、今は昔の出来事だ。
昔語りが多くなり恐縮だが、こんなことも覚えている。
私の子どもたちが、あの時の私の年齢であった頃のことだ、つまり一世代経ったことになる。
場所はカナダのトロントで、当時は日本人は少なく、子どもたちは現地の公立小学校に通っていた。その小学校に隣接して小さな図書館があった。
文字食い虫の私は、日本語の本がないので仕方なしに、この図書館に出入りしており、読んだ本の中に第二次世界大戦当時の記録本があった。こう書いてあった。
 1945年4月30日、ナチスドイツ総督、アドルフ・ヒットラーが自殺。戦争は終結した。しかし極東の日本は、戦争が終わったことを知らず、その後も戦いを続けた。
この部分を読んだ時の衝撃というか、唖然感というか、これは大きかった。
欧米の人々は、こういう風に受け取っていたのか、と新しいことを発見したような気持ちだった。4月30日から8月15日までの間に死んだというよりも殺された人々を思った。
ところ変われば事実も変わるということだろうか、事実、真実とはいかなるものぞや。今日まで黙っていたことですが、もう明日の命の保証もない年頃であるから、溜め込んでおくのをやめて放り出してしまおうっと。
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