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愛木の死

私の愛する木、愛木が死んだ。まさか死ぬとは思わなかった。でも、冬の間じゅう、深く艶やかな葉を広げていたのに、芽が動き出す今になって突然枯れた。レッドウッド。カリフォルニアのレッドウッドの森からやってきた。セコイヤの一種、杉。長男が留学していたときに訪れた巨木の森で、お土産にこの木のかけらを買った。ポリ袋に入った小さな木片は、日本に運ばれて芽を出した。背丈を超えたときは、誰もが信じられないと驚いた。見上げる高さに成長したレッドウッドは、やがて巨木の子の気配を見せ始めた。一年に一メートル以上伸びる。太い腕を広げる。私は隣家に遠慮して枝を切る。巨木の子が巨木になるには、我が家の敷地全部を使っても不足だろう。30メートル、40メートルの高さまで伸びたい木だ、二階のベランダを越えて伸び続ける頂点を遂に私は切った、のが去年だった。これ以上、伸びないでと報せたのだ。あなたは大きくなりすぎたら、ここにいられないの。だから、もう大きくなるのを止めてちょうだい。いまのままでいいのよ。いまのあなたを愛してる。私は、あなたを、ほんとうに愛してるわ。
『木の教え』という本を読んだ。読書評に書いた本です。その中に、木の自殺について書いてあったのを思いだした。もう、こんな場所では生きていられないと木が思ったときに、木は自殺する。そう書いてあった。私の、私本意の愛が、殺してしまった。
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