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Apr 2015

雪解けの季節

各駅停車の電車に乗って越後湯沢へ行って来た。桜散る高崎、桜咲く水上。水上を発車した3両編成の電車は、土合の深いトンネルをくぐる。トンネルの上は谷川連峰の名だたる山々が連なる地域である。日本列島の背骨、この大屏風の日本海側にある越後では、梅の花が一輪二輪ほころび始めていた。見渡す限り雪が覆い被さり、車道は乾いて夏とおなじ。側溝に溢れる雪解け水の、奔流の激しさに目を見張った。幹線道路脇の太いコンクリ製の電柱の足下にフキノトウが出ていた。
 新幹線なら、大宮から一時間足らずで着く越後湯沢だ。しかし土地の人たちは、隣駅に行くにも一日がかり。バスはあることはありますが不便ですよと言われた。
 水上から長岡へ向かう電車は、日に5本ある。9時47分発の電車に乗り遅れると、次の電車は13時42分である。新幹線は速い。早いがトンネルに続くトンネルで車窓から見える景色はほとんどない。都心から道中の風景を見ずに、一足飛びに目的地へ着いてしまう。これが新幹線だ。道筋で生活している人々に視線を向けることはなく、目的地で、至れり尽くせりの温泉宿でご馳走食べて目玉の場所を眺めたら、まっすぐ戻る。
 各駅停車のなかは賑やかだった。出会ったばかりで、降りたら二度と会わないだろう人たちが喋る。二度と会わないと分かっているから、共通の話題で本音を言う。角栄さん、の名が出た。あの人が、やってくれたから。そうだよ、お陰で東京とつながったさ。新幹線の産みの親、田中角栄元総理大臣。その後がいけないね。小渕もね、森もね、みんなこれだよ、と親指と人差し指で輪をつくって見せる。水上をどう思ってるんだ、寂れちまって。日本中だよ、寂れちまったさ。
 青春18きっぷで一人旅をしている人がいた。私と同年配に見えたので、それって学生向けでしょ、と驚いたら、年齢には関係なく利用できるのだそうだ。5日間乗り放題で1万円余り。「北海道も、これで行った。いまが青春だね。金はないけどよ、時間がある」。
 車両のドアの上をチラチラ見る私。しかしそこには何もなかった。次はX駅です。お出口は左側です。そんな表示が出るので便利なドア上だが、三両編成ローカル電車には、それはない。すべてアナログ、すべて手動。乗り過ごしたら帰れなくなる。皆の話は上の空で駅名を読み取ろうとしていたら、大丈夫だよ、教えてやるからさ、と何人も声を掛けてくれた。温か、すべて人動。
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統一地方選挙

今度の日曜日は、第18回統一地方選挙。私は、さっさと期日前選挙をしてしまった。小さなバンが連呼しながら走り回るので、ネコもびっくり、首を伸ばしている。感慨深いのが候補者たちの人相である。平和顔。甘ちゃん顔。個人個人をみれば、何かがない人間はいないだろう。何かを乗り越えて、努力もしてきているだろう。しかし、世代として見ると、ああ、この顔たちは、戦争を知らない顔だなあ、と胸を打たれるのである。願わくは、次の世代もその次も、平和顔が生まれ育って欲しいと思う。ただし、強い意思を持って平和を握りしめているんだ、という気迫の籠もった人相になって欲しい。
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長老コリドラス

3月26日の朝、コリドラスが死んだ。高齢なので、ちょっと横になっているのかもしれない、と翌日も見守っていたが、3日目に諦めた。とうとう死んでしまったのだ。
6センチという大きさは、この種類では最も大きい。詳しく言うと、ナマズ目・カリクティス科・コリドラス属。このなかのコリドラス・パレアトゥスという種類で、熱帯魚を飼う人たちが黒コリと呼んでいる、もっとも知られている種類だ。ヨットが帆を掲げるように、背びれを高く掲げている姿は、小さいながら堂々としていた。
水槽の底にいて群れるのが大好きだから、たった一人になってから寂しかったと思う。水槽に顔を寄せて声を掛けると、丸い目を向けてくる。わかっているのだ。他の魚たちと仲が良く、喧嘩をする姿を見たことがない。一家でいたときは、先頭に立って泳ぎ回り、あとからゾロゾロと一族が連なって泳ぐ姿は見ていて飽きなかった。卵を産むと、魚たちより私の方が大騒ぎで、隔離して孵化を待つ。この子供たちの可愛いことといったらない。大きな親の後ろを小さな子たちが遅れないように一所懸命についてゆく姿が、昨日のことのように思い出される。姿は地味だけれど、きわめて仲の良い、この性質が魅力で長く付き合ってきた。
4年前の3.11の日には、すでに独居の長老だったのだ。その日は図書館のボランティアに出ていて、急いで帰宅したときに目に飛びこんできたのは、水浸しの玄関だった。60センチの深さの水槽の水は半分以下に減っていた。倒れないだけ儲けものだった。このとき長老はすでに3年か4年経っていたから、相当の年齢だったことになる。
もともとは、ブラジルの海岸流域が故郷なのだ。たぶん日本で繁殖して売られたのだろう。いまこそ故郷に、飛んで帰って欲しい。
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