文房 夢類
文房 夢類
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トンボ、空へ!

昨日は発送仕事の大団円を迎え、意気高揚して上機嫌で寝てしまった。9時に寝たのである。意気盛んになったら眠れるはずもない、枕に頭がついたかつかないうちに、もう熟睡したのだから意気は消滅していたに違いない。
要は満足したから眠ってしまったのだろう。
当然のことながら3時に目が覚めてしまった。じっとしている義理もないわけで、朝湯に入って岡本綺堂を読む。改めてすごい人だなあと思う。綺堂は英語が読めたし、漢文は、もちろん通暁していた。
その上で和文を縦横に駆使する腕力は並大抵ではない。朝湯の湯船に顎まで使って旗本の三男坊の行状を味わい、はた、と膝は打たなかったが、首肯するところがあった。
ビオトープから立ち上がるコンクリートの壁に、羽を左右に伸ばしてトンボがいた。おめでとう!
ヤゴの姿の黒い抜け殻に掴まって、左右に伸ばした透明な羽が、ようやく射してきた朝日にきらめく。おめでとう!

タニシ、ごめんね

新型コロナ騒動のために引きこもり生活が続く。この季節にはホームセンターと行き来して、何やら作ったり、工事をしたりする。
ホームセンターでは、わずかの金魚とメダカも売っていて、ホテイアオイなどの水草も置いている。
ホテイアオイの冬越しができないので、毎春買っているが、今年はホームセンターに行かれない。仕方なく通販で買うことにした。
ホテイアオイの株を5つ、タニシも売っていたので、タニシを10匹注文した。あっという間に空輸便で飛んできたタニシをビオトープに入れた。
10匹に、1匹おまけが付いて11匹のタニシがきたのだが、石ころを入れたみたいに水底に転がっていて動かない。見ていても動く気配もないので関心がなくなってしまった。
2、3日して思い出したので見たら、3匹が死んでしまい、中の1匹は貝殻だけになっていた。かわいそうに。ところが残りの8匹が見当たらない。動いたのだろうか。
タニシは、ほとんどジッと動かないタチではないのか。この日は、とうとう発見できずに諦めた。
そして今日。いたのである。最初に入れた場所から1メートル以上離れた泥と苔の中を、ツノを出し、小さな貝殻を揺らしながら進んでいた。呆れた、タニシって、こんなに移動できるんだ。知らなかった!
一箇所にジッとして動かず、引越しも旅もしない人のことを私は、タニシのようにジッとして、と悪口を言った覚えがある。
タニシ、ごめんね。思わず口に出して謝った。もっとも、謝りながら笑っていたのだが。

新型コロナの災厄から得た個人的経験

武漢から発した新型のウイルスが豪華客船に乗って横浜港についた頃、最初にしたことが図書館の予約本の取り消しだった。カードを持っている図書館が5館、そのうちの2館に予約を入れていた。
借りていた本が7冊あり、これは十日のうちに返せば良いと予定していたが、covid19は、その余裕を与えなかった、返しそびれて私は家に閉じこもることとなった。
東京都の図書館と川崎市の図書館が全館閉鎖されたのは、その後1ヶ月も後のことだったから返しに行くことはできたのだろうが、怖がりのために動けない。図書館も、期限過ぎても構わない、家に置いておくようにとホームページで知らせてくれているので安心した。
これまで年間平均して3〜400冊読んでいる中で、9割程度が図書館本だった。これが今年の3月以降、突然ゼロになった。
話はここからで、なぜ本を買うのかというと読みたいと願うからで、しかも手元に置きたい本だからだ。そのほかに、急ぎ読む必要があるので買う本も加わるが。
必要に迫られて読む本は、すぐに役目を終えるが、一番大切な、ゆっくり読みたい本は、そのうち読もうと後まわしにする。
その結果、開かれることなく書架にひしめく数多の本に加わることになる。3月4月5月。
この大切な本たちの扉が開かれてゆく。若葉緑の5月に、扉のうちから瑞々しい言葉が溢れる。

出稿の後

小誌「夢類」第27号の版下を渡し、校了し、出来上がりを待つ間の日々は、開放感と嬉しさに満ちている。以前は、この空き時間を旅に使っていたが、今は車を降りたし、今年はコロナウイルスの災いで自宅蟄居が続く事態だから動かない。
玄関前のペンキが剥げている部分を塗り直すつもりだったのを、今日の午後に手をつけた。洗い流したので、明日はプライマーをスプレーしようと思う。去年の今頃、塀のペンキ塗りの時にプライマーを使ってみて、その効果にびっくりした。一カ所も剥げないで綺麗。
今度は面積が狭いから簡単なスプレー缶を買った。こんな手作業をすることを書くことに織り込んで行くのは、私の性に合っていて一挙両得の感じがある。
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