文房 夢類
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文房 夢類

検証 原発事故報道

『検証 原発事故報道』副題ーあの時伝えられたこと 広河隆一(ひろかわ りゅういち) 監修 デイズジャパン 2012.3発行 雑誌 ¥1800 224頁 230mmX298mm
監修者=1943年中国天津生まれ 早稲田大学卒業後、イスラエル問題などジャーナリスト。月刊写真誌DAYS JAPAN 発行、編集長
内容=2011.3.11~17 の1週間のあいだに、TV、新聞、ツイッターが何を伝えたか。それに対する検証をつけて、見開きの2頁に、表としてだした。東電・保安院・官邸・テレビはNHKと民放のふたつ、新聞は、朝日、毎日、読売、東京、日経。これにツイッター・ブログ。注目報道は赤字で出している。
感想=同日、同時間帯に、どこが何を報道し、その内容はこうであった、と一目瞭然。ずいぶん手間のかかる仕事だったと思うが、これは貴重な資料だ。誰もが、あのとき、あそこはああ言ってた、と漠然と思い出すが、確かではない。それを、このように表にしてまとめられるといい加減なことを言っていたのはどこか、も明瞭だ。報道する側もこんなことをされるとは思わなかったろう。以後、緊張して貰いたい。
ただ、私自身はこれらのほかに、アメリカ、カナダの新聞を見ていたことと、ドイツが発表する汚染マップを見ていた。

米陸軍サバイバル全書

米陸軍サバイバル全書』(SURVIVAL FM21-76)HEADQUARTERS,DEPARTMENT OF THE ARMY 編 鄭 仁和 訳 並木書房2011 第3版発行 ISBN978-4-89063-282-4 ¥2400 408頁 148mmX210mm
内容=本書の原本は米国陸軍兵士のための教本。一部をアウトドア用に出版し、第2版では核の部分を全部削除していたという。今回の大災害をきっかけに、核兵器への対処法も入れてある。
感想=第一番に心理を取り上げ、ついで医療、水と項目が進むが、どれも的確、簡潔ですっきりしている。ぜひ英文の完全版で接したい本。
具体的に自分をその状況に置いてみて、想像しながら読むと、いざというときにちがう、と思う。訓練した兵士はサバイバルできるが、予行演習をしていないと死ぬ確率が高いという。核に関しては、東北、関東は、想像どころか現在がサバイバル状況なのだ。

陸軍登戸研究所と謀略戦

陸軍登戸研究所と謀略戦』副題=科学者たちの戦争 渡辺賢二(わたなべ けんじ)著 吉川弘文館2012年発行ISBN978-4-642-05737-0 ¥1700 208頁 187mmX128mm
渡辺賢二=1943年秋田生まれ 法政大学第二高校教諭を経て現在明治大学文学部非常勤講師
内容=第二次世界大戦時に、登戸研究所が行っていた研究の実態。墓場まで持ってゆく、と口を閉ざしていた陸軍登戸研究所関係者が、著者と高校生たち、そして地元川崎市民たちとの四半世紀にわたる交流の年月の間に、次世代へ向けて記録を残そうと気持ちが進んでいった。その結果、明らかにされた謀略戦、秘密戦の実態が、ここに記される。風船爆弾、偽造紙幣、秘密インキなどの研究が行われた当時の、科学者と戦争の関係を描いている。
感想=ついに、土地の普通の人たちの力が実を結んだ。登戸研究所は、自然の時の流れに埋もれると同時に、埋もれてしまえ、忘れてしまえ、という方向へと落ちていた、と思う。しかし今は、研究所の跡地である明治大学生田キャンパス内に、資料館を開館するまでになった。本書の前身というべき本を私は所有しているが、こんど、吉川弘文館の「歴史文化ライブラリー 337」として発行されたことで、晴れて世に出た、という感慨がある。陸軍がしたことについては、戦争であるとはいえ、おぞましくて読むのもためらわれる内容だ。

敗戦真相記

敗戦真相記』永野 護(ながの まもる)著 バジリコ株式会社2002年発行 192頁 ¥1000 ISBN4-901784-04-8
永野 護=1890~1970 広島生まれ 帝大法科卒 渋沢栄一の秘書。東洋精油取締役、証券会社専務、会長などを経て、戦中、戦後にかけて衆議院議員2回、のち参議院議員。岸伸介内閣で運輸大臣。「永野兄弟」として知られた実弟4人、おのおの政財界で活躍した。この方のお母さんは、5人の男の子を育てるのは大変だったろうなあ、とまず思った。私は4人男の子ばかりの兄弟の人に会ったことがあるが、ウチの母ですか? いやぁ、男みたいですよ、と言っていた。
内容=1945年9月、広島で行った講演の記録。のちに要望が多く、同年11月に出版。本書は日本経済新聞論説委員、田勢康弘の解説をつけて再出版したもの。戦争がどのようにして起こったか。どのようにして敗れたか。日本の将来についても語っている。
感想=本書は、当時の発言が、そのまま現実になってきているではないか、という評価のもと、読者が増えている。今回の福島原発の際の政府の対応と変わらない態度が、あの戦争中の各所にあったこと、また、現在の様相と瓜二つの官僚の性質と態度に、唖然とするしかなかった。これでは、さあ、これから日本は沈没、没落してゆくのですよ、今は、その前夜にいるわけですよ、と解説されているようなものである。敗戦時に軍閥を消滅させ、財閥を解体した。そして官僚だけが生きながらえてきたのだ、ここに禍根の根がある。

メルトダウン

メルトダウン』副題=ドキュメント福島第一原発事故 大鹿靖明(おおしか やすあき)著 講談社2012年1月発行 ISBN978-4-06-217497-8 ¥1600 128mmX187mm 368頁 参考文献・情報源詳細有
著者=1965年東京生 早稲田大学卒 朝日新聞社経済部記者 現在アエラ編集部に出向 ライブドア、JAL に関する著書あり
内容=1)3.11の瞬間から約1月の様相 2)その間の政財界と東電の動き 3)菅内閣総辞職までの9ヶ月間 の3章構成。
いままでに読んだものは、原発プラント現場の様相と核に関する情報が主なものだった。本書の眼目は、この大災害と大事故をめぐる関係組織の人々の動きにある。100人以上の主要人物に直接会い、取材している。無視した人、立ち話の人、資料を出して丁寧に説明した人などさまざまだったという。経済部記者だった故に、経産官僚、東電社長、会長など主要人物についても非常に詳しい。
帯の惹句に「官邸、経産省、東京電力、金融界の間で繰り広げられた壮絶かつ不毛なバトルを描いた調査報道ノンフィクション」とある。
感想=第一の感想は、ここまで一般市民をないがしろにする心を持っていたのか、というため息だった。私が肝をつぶし、一から原発について学んでいる4月5月に、彼らがすでに原発を推進すべく動き出していたとは知らなかった。国民は、守られ、救済される存在ではなく、国債という面で懐を当てにされている存在だった。TVなどでは報道されなかった姿として、東電清水社長が、次第に廊下をふらつきながら歩き、独り言をつぶやくようになり、そして入院したありさま、表に出たくない勝俣会長が記者会見に引っ張り出されて、挙げ句の果てに辞任となった無念さなどは、近くで眺めている者でないとわからない姿だ。
ただ、著者は生粋の記者故に、ペンにその性癖が染みついている。故に読者に負担をかけずに浸透させるような筆力を駆使している。これは良い面と同時に足をすくわれる部分を持っていて、注意して読まないと著者の価値観と感情を共有させられることになる。また、頻繁に出てくる「ご注進」「寵臣」などという形容が、日本の大組織の素肌を見せてくれる。
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