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May 2015

黒部の山賊

『黒部の山賊』副題=アルプスの怪 著者=伊藤正一(いとう しょういち)発行=山と渓谷社2014年 222頁 19 cm ¥1200 ISBN9784635047685
著者=1923年長野県松本生まれ日本勤労者山岳連名創設者。雲ノ平山荘など建設。北アルプスの伊藤新道を独力で完成。
内容=本書は、はじめ1964年に山と渓谷社の雑誌「ハイカー」に連載された。1994年に新版が刊行されたが、山荘でのみ売られていた。今度、加筆訂正、新たに写真を加えて定本として再構成した。本書は人気あり、多くの岳人が読み親しんできた本。伊藤氏が黒部の思い出の数々を語る。高桑信一・高橋庄太郎が巻末に寄稿している。
感想=黒部の山。日本列島のなかでも、際立つ山深いところである。黒四ダムのできる遙か前からの黒部を語ってくれる。山賊とあるが、四人の山族だ。遠山富士弥・遠山林平・鬼窪善一郎・倉繁勝太郎。顔写真が出ている。なんと良い顔だろう。そして伊藤さんの顔も出ている。伊藤さんが四人との出会い、山の化け物たち、遭難と登山者、山小屋生活などを語るのだ。
山族の人は崇高である。伊藤正一さんは、私費を投じ自力で伊藤新道を完成させている。この新道こそ、雲ノ平への最短ルートである。本書にはないことだが、谷川岳には、高波吾策さんがいらした、この方も、私費で自力で、吾策新道をはじめ何本もの登山道を拓かれたのだ。日本の山には、このような立派な人物がいる。
ヤマメの話、クマの話。想像を絶する黒部の山水の話。大金鉱があるという山師の話。黒四ダムの歩荷の写真には腰を抜かした。こんな大荷物を山に運び上げるんだ、背に負うて、と唖然とした。戦後、復員してきた男の、あの小平事件を思い出さずにはいられない事件が、言葉少なに語られているが、絶句した。深刻な暗い話もあるが、おかしくて笑い出さずにいられない話が山ほど出てくる。笑わせようとして書いているのではない、事実をありのままに語っている、それが笑わずにはいられないのだから大笑いだ。エピソードを笑うのではない、人生を、人間を、自分を含めて笑える山の文学。
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