文房 夢類
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文房 夢類

子どもの本のよあけ

子どもの本のよあけ』副題=瀬田貞二伝著者=荒木田隆子発行=福音館書店2017年サイズ=210X148mm477頁瀬田貞二著作リスト=24¥3200ISBN9784834083156
著者=荒木田隆子あらきだたかこ元児童書出版社の編集者。在職当時は瀬田貞二氏の担当編集者として『落穂拾いーー日本の子どもの文化をめぐる人びと』『絵本論ーー瀬田貞二子どもの本評論集』『児童文学論ーー子どもの本評論集』などを手がけた。著書『鈴木サツ全昔話集』東京在住
内容=副題にある通り、児童文学者、児童文学翻訳家の伝記で、東京子ども図書館主催の講座をもとに、その業績を辿り記している。
感想=瀬田貞二 who
名を知らない人も多いだろう、しかし。
心に残る思い出のこの絵本、あのお話。その本の隅っこに、この名が小さく記されているのを見つけるはずだ。
瀬田貞二氏は、成育期に戦争に巻き込まれた世代だ。大学在学中に兵士にされ、負けた国の若者のひとりだった。その廃墟から立ち上がった不死鳥の一羽だった。
瀬田貞二氏が希求したものは何か。子どもたちの心を育もうと一生を賭けた。この本は、そういう生き方をした人の姿を描き出している。
荒木田隆子氏の書いた「まえがき」は心を打つ。子どもたちを育んだと同時に、次の世代の文学者たちをも立派に育てて児童文学の土壌を豊かなものにしたことが伝わってくる。これは長い時間を共にし、敬愛した者によってのみ記すことができるもの、それゆえに読む側に瀬田貞二氏の人柄をも手渡してもらえるのだ。
苗を育てる人。そして苗を育てようと集まってきた人たちを育てる人。そういう人だったことがわかる。
巻頭8ページにわたり、カラーで「児童百科事典」「評論集」「いいもの、すばらしいもの」として多数の著作が紹介されている。もちろん「よあけ」「おだんごぱん」なども出ている。丁寧な作りで「まえがき」の次に凡例の頁を設け、続いて年譜がある。巻末に横書きでつけてある著述リストが貴重な資料。「資料編」が良い。近来、最高の本の一冊ではないだろうか。
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