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May 2013

社会を変えるには

『社会を変えるには』小熊英二著 講談社現代新書 2012年発行 ISBN978-4-062881685 ¥1300 517頁
著者=1962年東京生まれ 東京大学大学院総合文化研究科国際社会科学専攻 慶応義塾大学総合政策学部教授
内容=いま日本でおきていることは、どういうことか。社会を変えるとは、どういうことか。歴史的、社会構造的、思想的に考え、社会運動の新しい可能性を探る。
感想=
社会を変えたい、今のありように満足できない、という気持ちを抱えている人に有益な本。まず、自分の立ち位置を確認するところから、本書は始まる。平面的な座標上の「我々」「私」ではなく、3次元の座標に立ってみる。そのための作業が、現在に至るまでの歩みを述べている部分。最後に、ではどうするか。いままでは、討論して相手を凹ませる、言い負かす、自分の考えに相手を従わせる、感化させる、という形の討論ばかりだった、いまの国会討論を聞けば、見本のようなセリフが並んでいることが分かる。しかし、それでは上から目線の説教だろう、そうじゃなくて、問答によって、相手も変わるかもしれないが、自分自身も変わる、これが対話だろう。この対話から、社会が変わる一歩が踏み出せるんだ、と著者は言う。著者は、1年余り病に沈んでいたとのこと、そして拾った命、と現在を述懐している。生き死にの瀬戸際を通ると、些末なことはどうでもよくなり、発想も人生観も変わるにちがいない。我々も、3.11を経験し、だれしも考えを巡らせ、変わった部分を持ったはずだ。本書は、読んで終わりではない、本を閉じたところから活かす本です。私は、長らく、「同感する」人たちだけが集まる姿に不満と疑問を持っていて、この人の言い分は気に入った。説教ではなく、自分も変わる、という、ここが大事なところだと思う。テーブルの上に、互いに自分のカードを1枚づつ出してゆく、カードゲームのように。カードが積み重なって、そこに、新しい姿が現れるのを見るのは、凄く楽しいし、実りある行為だと思う。

戦争と飢餓

『戦争と飢餓』THE TASTE OF WAR 著者=リジー・コリンガム LIZZIE COLLINGHAM 宇丹貴代実・黒輪篤嗣訳 河出書房新社2012年発行 128mmX187mm ISBN978-4-309-22586-9 ¥4500 P487 文献 P45
内容=第二次世界大戦で、関係各国は軍隊と自国民の食料をどのように扱ったか。戦争を食物という視点から追った記録。
著者=ウォーリック大学で歴史を教えた後、ケンブリッジ大学ジーザスカレッジ研究員。本書執筆のためにオーストラリア、日本、フランス、ドイツを訪れた。
感想=
食料面から辿っていった戦争の記録に、いままで出会ったことがなかった。アメリカが悠々と戦いに臨めたのは、広大な土地を持ち、食料生産に不安がなかったことと、戦争中も各分野で技術革新をし続けるだけの知力を含めた体力を持っていたからだとわかる。これに対してイギリスは日本同様の島国ゆえに食糧不足もまた、日本同様であった。しかし、イギリスの主婦は前線にいる夫への手紙で嘆く、毎日同じ肉、飽き飽きしたわ。質は落ちても飢餓とは無縁の第二次大戦だったわけだ。なぜか。著者は、飢餓を輸出していた、という表現をする。つまり、植民地インドなどから本国へ食料を送り、植民地が飢餓に苦しみ、大量の餓死者を出していたのであった。チャーチルは、インドの飢餓に対して、無情を超えた非人間的感覚を持ち、完全に意に介していなかったことがわかる。ドイツは、第一次大戦の経験から、食料の重要さを知悉していたために、周到に準備をした。しかし計算通りには行かず、これもロシアなどを悲惨な飢餓に陥れた。ロシア周辺の少数民族は、ドイツに蹂躙され、ロシアからも見捨てられた。アウシュヴィッツの出来事以前に、比肩する出来事が多々あり、これらの大虐殺の根源が、実は「口減らし」にあった、と著者は記している。本書を読むと、戦争で命を落とした人々は、兵士のみならず一般人がいかに多くを占めていたか、そして死因が飢え死にと、栄養不足からの病死であった。そして。ぜひ読んでみて頂きたい。日本はどうだったろう? アメリカの兵士が食べ放題のハイカロリー、アイスクリーム付き食事を供給されていたのにくらべて、2,3日分のケイタイ食料で、何週間も戦地の原野に放り出されていたのだ。日本兵は野草を食べて戦った、日本兵ほど粗食に耐える兵士はいない、と著者は書いているが、私は、これが民家から「調達」する原因になっていたな、と思った。「調達」とは、つまり一般民家から食料を強奪するのである。日本国内の飢餓状態はすさまじいものだった。著者は直接の聞き取りにより、丁寧に記している。しかし、私の目から見たところ、これでも物足りない。とくに敗戦後の東京の飢餓は、これ以上であった。
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