文房 夢類
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文房 夢類

戦争と飢餓

戦争と飢餓』THE TASTE OF WAR 著者=リジー・コリンガム LIZZIE COLLINGHAM 宇丹貴代実・黒輪篤嗣訳 河出書房新社2012年発行 128mmX187mm ISBN978-4-309-22586-9 ¥4500 P487 文献 P45
内容=第二次世界大戦で、関係各国は軍隊と自国民の食料をどのように扱ったか。戦争を食物という視点から追った記録。
著者=ウォーリック大学で歴史を教えた後、ケンブリッジ大学ジーザスカレッジ研究員。本書執筆のためにオーストラリア、日本、フランス、ドイツを訪れた。
感想=
食料面から辿っていった戦争の記録に、いままで出会ったことがなかった。アメリカが悠々と戦いに臨めたのは、広大な土地を持ち、食料生産に不安がなかったことと、戦争中も各分野で技術革新をし続けるだけの知力を含めた体力を持っていたからだとわかる。これに対してイギリスは日本同様の島国ゆえに食糧不足もまた、日本同様であった。しかし、イギリスの主婦は前線にいる夫への手紙で嘆く、毎日同じ肉、飽き飽きしたわ。質は落ちても飢餓とは無縁の第二次大戦だったわけだ。なぜか。著者は、飢餓を輸出していた、という表現をする。つまり、植民地インドなどから本国へ食料を送り、植民地が飢餓に苦しみ、大量の餓死者を出していたのであった。チャーチルは、インドの飢餓に対して、無情を超えた非人間的感覚を持ち、完全に意に介していなかったことがわかる。ドイツは、第一次大戦の経験から、食料の重要さを知悉していたために、周到に準備をした。しかし計算通りには行かず、これもロシアなどを悲惨な飢餓に陥れた。ロシア周辺の少数民族は、ドイツに蹂躙され、ロシアからも見捨てられた。アウシュヴィッツの出来事以前に、比肩する出来事が多々あり、これらの大虐殺の根源が、実は「口減らし」にあった、と著者は記している。本書を読むと、戦争で命を落とした人々は、兵士のみならず一般人がいかに多くを占めていたか、そして死因が飢え死にと、栄養不足からの病死であった。そして。ぜひ読んでみて頂きたい。日本はどうだったろう? アメリカの兵士が食べ放題のハイカロリー、アイスクリーム付き食事を供給されていたのにくらべて、2,3日分のケイタイ食料で、何週間も戦地の原野に放り出されていたのだ。日本兵は野草を食べて戦った、日本兵ほど粗食に耐える兵士はいない、と著者は書いているが、私は、これが民家から「調達」する原因になっていたな、と思った。「調達」とは、つまり一般民家から食料を強奪するのである。日本国内の飢餓状態はすさまじいものだった。著者は直接の聞き取りにより、丁寧に記している。しかし、私の目から見たところ、これでも物足りない。とくに敗戦後の東京の飢餓は、これ以上であった。
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