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アフガン侵攻
』(AFGANTSY:The Russians in Afghanistan 1979-89) Rodric Braithwaite 河野純治訳 白水社2013年発行 ISBN978-4-560-08266-9 ¥4200 128x187cm P560 人名索引・出典・原注。参考文献・写真クレジット
著者=1932年ロンドン生れ 元外交官・英国情報部・外務省勤務・モスクワ駐在大使・引退後はドイツ銀行顧問・王立音楽院長
内容=1979年、ソ連軍は共産党政権支援を目的にアフガニスタンへ侵攻した。当初の任務はアフガン軍支援だったが、米国・パキスタンが支援するイスラム軍との全面戦争に発展、9年後に撤退した。この間、15000人のソ連兵、無数のアフガン人が死んだ。侵攻の発端から撤退までをソ連側からの視点で描く。資料を基に客観視を基本姿勢として詳細に記述。
感想=プロローグの最後の所を引用すると「ソ連軍はロシア、ウクライナ、ベラルーシ、中央アジア、カフカス、バルト三国など、ソ連のあらゆる地域出身の兵士で構成されていたが、みな同じソ連の国民であるという意識を持っていた。しかし戦争末期、撤退が近づく頃になると、その意識もうすれていく。ソ連が解体し始めると以前の同士が自分とは全く異なる、ときには敵対的な国に住んでいることに気がついたのだ。そして、アフガン帰還兵の多くは通常の市民生活に戻るまでに何年もかかることになる。結局、戻れなかった者もいる。そして、自分たちが戦った同じ戦争の記憶から解放される者は誰一人としていなかった。」
チェルネンコの死後、何時間もしないうちに彼の後任に任命されたゴルバチョフは撤退を見据えて、中央委員会に届いた戦死者の親の手紙を読み上げた。
その手紙の一節「われわれは誰のためにアフガニスタンで戦っているのですか? アフガン人自身は、われわれが国際的任務を遂行することを望んでいるのでしょうか? 若者たちの命を犠牲にするだけの価値があるのでしょうか? 彼らは自分がなんのために戦っているのかわからないのです。若い新兵たちを、プロの殺人者やならず者たちを相手にたたかわせるなんて、よくそんなことができますね? 政治局の皆さんは間違いを犯しました。その間違いを正せるのはみなさんだけです。一刻も早く間違いを正してください。毎日、犠牲者が増え続けているのですから」。
生還できたソ連兵に、満足な住居、義足義手などはなく、自殺に追い込まれた帰還兵も出たという。この記録はソ連側からの目で描かれていて、アフガニスタンの普通の人々には言及していない。しかし、いつの時代も、どこの国でも、比較にならないほど多くの普通の人たちがいちばんの被害者だということが、本書を読み、描かれていない部分を思い、感じました。普通の人たちのなかには、勿論、生還できたにもかかわらず生きることができなかった若いソ連兵とその家族も含まれるのです。