土壌汚染
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土壌汚染
』副題=フクシマの放射性物質のゆくえ 著者=中西友子(なかにし ともこ)発行=NHK出版2013年 220頁 サイズ=19cm ¥950 ISBN 9784140912089NHKBooks
著者=東京大学教授 理学博士 専門=放射性植物生理学
内容=福島原発事故による放射性物質の飛散。セシウムはどこへ行ったのか。農産物は、ほんとうに危ないのか? 事故直後から現在までの農産物調査と実験の結果を分析、土壌汚染の実態について明らかにする。
感想=福島原発事故以前の1960年から、すでに日本列島の放射性物質による汚染を観察、記録、研究してきていることを知った。当時の核実験の影響が報道されず、しかし現実には深刻な状況として存在していたことを研究者たちが知っていたことを、私は知った。はじめは地上で、のちに地下実験として、どれだけの核実験をやったことか。その影響を世界中の関係機関は閉じたなかに埋め込んで沈黙していたことを、改めて思った。
知らずに,汚染された荒野で西部劇のロケをしていた人々。有名なスターのジョン・ウェインの死だけが報じられたが、彼の死と核実験とを、世界中の誰が結びつけただろう。被害者は核実験を行った国の人々の中にも、相当数いるのだ。
これは置いておいて、本書は、緻密に,根気よく、長期にわたり研究を続けてさらに、フクシマの事故については,いっそう力を込めて研究、分析をしている。汚染の実態。土壌汚染、果樹の汚染、家畜の汚染、野生動物の汚染、魚の汚染……。いったん降ってきた放射性物質は循環するか,と言う問題についても、森林、生物系について詳しい。とくにキノコに蓄積するという観察結果が記される。さいごに、これからの除染についても。
著者の最後に、こうある。本書で紹介される実際の知見が、放射能汚染との向き合い方を考える際のよりどころとなるならば、これにまさるよろこびはない。
私は、自分自身が充分に汚染されきっていることを自覚した。これが本書を読了した際の感想である。どういうことかというと、著者が、基準値以下のコメ、と書く。あれも、これも基準値以下だ、と。いったい、いまどきだれかの決めた基準値を真に受ける人間がいるだろうか、バカバカしい。土壌を分析して、セシウムは土壌にくっついたら離れない、と著者たちが結果を出したとしても、それは最終段階の状態であり,流動的な現状に当てはめられるものとは、私は信じない。著者と周辺の関係組織は、このような説得説明によって、放射性物質をいたずらに恐怖するのではなく、この著書のような(大丈夫だよ、こわくなんかないよ)向き合い方で、冷静に、確実な知識を持って接しましょう、と読者が考えてくれるだろうと期待しているのだろうが、そうはいかない。肝心な基本部分が「不信」に犯されてしまっている故である。いったん決めた基準値レベルを朝令暮改的に変動させた事実、その他、書ききれないほど多くの不信を招く行動の足跡が、何を信じたら足場が安定するのか、分からなくさせてしまった。だから、一所懸命に研究している方々に気の毒だが、このような内容を、(こうやって丸め込む気だな?)と読み取るのである。