放射線健康障害の真実
28-02-15-13:20-
『放射線健康障害の真実』著者=西尾正道(にしおまさみち) 発行=旬報社 2012年4月 21cm 95頁 ¥1000 ISBN9784845112623
著者=函館市生まれ。札幌医科大学卒業。国立病院機構北海道がんセンター院長
内容=内部被曝とはどういうものか。なぜ危険なのか。放射線によるがん治療を行ってきた著者が、被爆による健康被害についての研究結果を一般向けに解説。
感想=2011.3.11以来、続けている核勉強は果てしがない。ようやく内部被曝に辿り着いた。この、たった100頁足らずの横書きの、写真と図版の多い本を紹介しようとすると、何十行も書かなければならない。ほとんどの頁に付箋をつけてしまった。
いま売れる本は健康関係とレシピ本だと言われる。現に図書館で貸し出される図書は、まさにこの2種に集まっている。今夜のおかずを心込めて作る若いお母さんたちは、今夜だけでなく、孫の孫たちの食卓も想像してみて欲しい。この本を読むと、遠い先の、これから生まれ来る命のために考えようという気持ちが生まれるだろう。年老いた人々に言いたい、明日も知れない命なんだ、先のことなんか知ったことか。などと言わないで地球の命を思いやって頂きたい。
内部被曝は晩発性の「静かなる殺人」行為だという。東電の作業員たちの被曝がこれである。放射性医薬品を扱う日本メジフィジックス社は、3.11当時、ラディオガルダーゼという薬を緊急輸入、無償提供を申し出た。これはセシウム137の腸管からの吸収を阻害、排泄を促進する薬剤だった。しかし政府は取り合わなかったそうだ。研究開発に240億円をかけたSPEEDIの情報は封印され、報道される数値はでたらめに近かった。政治的意図によって基準値を動かした。「がんばろう、日本」と100万回叫ぶより、真実を一度話すことが重要、と著者は言う。原発プラントの崩壊による実質被害と行政の「判断=無知+故意」が国民に与えた被害は計り知れない。
当時米国は自国民に対して80km圏内からの逃避命令を出した。西尾先生は、米国は低線量被曝が及ぼす被害の真実を知っていた故の対応だろうと書いている。なぜなら米国は1943年から劣化ウラン弾の研究をしており、1991年にイラク戦争で使った。結果、バスラにおけるがん患者数の増加、先天障害の発生率の上昇を掴んでいた。また、帰還兵士たちの病状も知っていたのである。
国際放射線防護委員会(ICRP)国際原子力機関(IAEA)欧州放射線リスク委員会(ECRR)という3つの国際機関がある。このうちICRPとIAEAは原子力推進派であり、外部被曝のみを扱っている。ベルギーに本部を置く民間団体のECRRだけが慢性被曝・内部被曝も視野に入れている。核開発や原発を担う人たちの要請で基準値を動かした、と言うICRP関係者の証言がでている。日本は、このICRPを土台にした。でたらめの上にでたらめを重ねたのだった。
この原発事故をターニングポイントとして命と生活に関する価値観を問い直そう、と著者はあとがきに書いている。もうじき3.11から4年になる。忘れるな、などという人は甘い。忘れるどころか本腰を入れて考え続けなければならない。価値観を変えるチャンスなのだから。
著者=函館市生まれ。札幌医科大学卒業。国立病院機構北海道がんセンター院長
内容=内部被曝とはどういうものか。なぜ危険なのか。放射線によるがん治療を行ってきた著者が、被爆による健康被害についての研究結果を一般向けに解説。
感想=2011.3.11以来、続けている核勉強は果てしがない。ようやく内部被曝に辿り着いた。この、たった100頁足らずの横書きの、写真と図版の多い本を紹介しようとすると、何十行も書かなければならない。ほとんどの頁に付箋をつけてしまった。
いま売れる本は健康関係とレシピ本だと言われる。現に図書館で貸し出される図書は、まさにこの2種に集まっている。今夜のおかずを心込めて作る若いお母さんたちは、今夜だけでなく、孫の孫たちの食卓も想像してみて欲しい。この本を読むと、遠い先の、これから生まれ来る命のために考えようという気持ちが生まれるだろう。年老いた人々に言いたい、明日も知れない命なんだ、先のことなんか知ったことか。などと言わないで地球の命を思いやって頂きたい。
内部被曝は晩発性の「静かなる殺人」行為だという。東電の作業員たちの被曝がこれである。放射性医薬品を扱う日本メジフィジックス社は、3.11当時、ラディオガルダーゼという薬を緊急輸入、無償提供を申し出た。これはセシウム137の腸管からの吸収を阻害、排泄を促進する薬剤だった。しかし政府は取り合わなかったそうだ。研究開発に240億円をかけたSPEEDIの情報は封印され、報道される数値はでたらめに近かった。政治的意図によって基準値を動かした。「がんばろう、日本」と100万回叫ぶより、真実を一度話すことが重要、と著者は言う。原発プラントの崩壊による実質被害と行政の「判断=無知+故意」が国民に与えた被害は計り知れない。
当時米国は自国民に対して80km圏内からの逃避命令を出した。西尾先生は、米国は低線量被曝が及ぼす被害の真実を知っていた故の対応だろうと書いている。なぜなら米国は1943年から劣化ウラン弾の研究をしており、1991年にイラク戦争で使った。結果、バスラにおけるがん患者数の増加、先天障害の発生率の上昇を掴んでいた。また、帰還兵士たちの病状も知っていたのである。
国際放射線防護委員会(ICRP)国際原子力機関(IAEA)欧州放射線リスク委員会(ECRR)という3つの国際機関がある。このうちICRPとIAEAは原子力推進派であり、外部被曝のみを扱っている。ベルギーに本部を置く民間団体のECRRだけが慢性被曝・内部被曝も視野に入れている。核開発や原発を担う人たちの要請で基準値を動かした、と言うICRP関係者の証言がでている。日本は、このICRPを土台にした。でたらめの上にでたらめを重ねたのだった。
この原発事故をターニングポイントとして命と生活に関する価値観を問い直そう、と著者はあとがきに書いている。もうじき3.11から4年になる。忘れるな、などという人は甘い。忘れるどころか本腰を入れて考え続けなければならない。価値観を変えるチャンスなのだから。