無人化と労働の未来
25-04-19-08:06-
『無人化と労働の未来』副題=インダストリー4.0の現場を行く ARBEITSFREI Eine Entdeckungsreise zu den Maschinen,die uns ersetzen 著者=コンスタンツェ・クルツ&フランク・リーガー 訳=木本栄 発行=岩波書店2018年 サイズ=190mm 234頁 ¥2800 ISBN9784000022347
著者=コンスタンツェ・クルツ Constanze Kurz 1974年東ベルリン生まれ。情報学博士。ホワイトハッカー集団 Chaos Computer Clubのスポークスマンの一人。ネット社会の自由と人権保護をテーマとするニュースブログ・ブラッドフォームnetzpolitik.org 編集員。他多々。
フランク・リーガー Frank Rieger 1971年旧東ドイツブランデンブルク州生まれ。ハッカー、コラムニスト、インターネットアクティビスト。通信セキュリティ企業の技術最高責任者。 Chaos Computer Clubのスポークスマンの一人。他多々。
訳者=きもと さかえ 年齢不詳 ロンドン生まれ。ボン大学卒。ベルリン在住。
内容=プロローグとして、日本の読者に向けて12頁にわたり解説がついている。この中に、本書の副題にあるインダストリー4.0の説明もある。これは第4次産業革命とも呼ばれるプロジェクトで、ソフトウェア、ロボットとネットワーク化による製造現場の変革推進である。
二部に分かれていて、第一部では畑からパンになるまでを現場見学ツアーに参加したかのように案内、この製品が無人化が進むロジスティクスによって、整然と迅速に消費者のもとへ届けられるまでを見せる。
第二部では、このような機械労働の影響、労働の未来を考察する。まず、運転手のいない自動車について。次に、しかし機械は人のためにあるのだ、人に対してやさしくあるためには、を考える。最後に置かれているのが「知能の自動化」だ。
この後にエピローグとして19頁があり、ここに著者ふたりの思想が織り込まれている。
感想=水車小屋から始まったパン作りが、ドイツでは今や、日に千トンの穀物を完全自動で製粉加工する。これが多種類の製品となり包装されて消費者へ届く。
これはドイツ国内の話だが、日本も同じだ。最終段階のロジスティクスも、アマゾン・ロジスティクスと付き合っていると、今やこれが当然、自然にさえ感じられる。
畑で大働きをした夫婦が疲れ切って眠っている真夜中に、屋根裏から小人さんたちが現れて働いてくれました、というファンタジーを超える働きをしてくれる今時の機械。
第一部を読んで、これが今なのだと、少しも驚かなかった。製造業だけではないことは、いまどきの銀行を見ればわかる。
第二部の運転手のいない自動車についても、ドイツも日本も同じだ、何が同じかというと、実用に至っていない点が同じなのだ。立ちふさがる難関を解決するには、と著者ふたりは、カメラ、センサー、などなど思案しているのがわかる。
この難関突破作戦の行く手に立ちはだかっているのは、安全面、事故のリスクの先にある責任や社会の判断などで、文面は機械技術から浮遊した言葉、たとえば賠償、義務、考慮、悪意、攻撃、感情的、禁止令などなどが、並んでいるというよりも、ひしめく。
最後に記されるのが、事もあろうに脳みそのロボット化である。
ここが読みごたえのある部分であり、読むだけではなく、読者が先頭に立って考えを進める必要がある部分だ。
これを詳細に語ることは、本書を読まずして内容を入手することにつながるために伏せるが、一つ例を挙げると、取材し、文章化する場合も人間の頭が不要になるという。
スポーツ記事を書く場合を例に挙げているが、野球なら野球専門、サッカーならサッカーに詳しい記者が腕によりをかけてレポートするのと肩を並べる記事になるだろう。これもまた、ドイツだけの話ではない、私にもわかる日本の話だ。
エピローグの最後に4行、ニコラ・テスラ(1856〜1943)電気技師、発明家の、次のような言葉が置かれている。
現在、ロボットは受け入れられたものの、その性能はまだ十分なレベルには到達していない。
21世紀には、かつての文明で奴隷が担っていた労働がロボットに取って代わられるだろう。
1世紀のうちに、それが叶わない理由は何もなく、それによって人間は、より崇高な目標を目指せるよう解放されるのである。
より崇高な目標を持つ我が身であるか、自問しよう。
著者=コンスタンツェ・クルツ Constanze Kurz 1974年東ベルリン生まれ。情報学博士。ホワイトハッカー集団 Chaos Computer Clubのスポークスマンの一人。ネット社会の自由と人権保護をテーマとするニュースブログ・ブラッドフォームnetzpolitik.org 編集員。他多々。
フランク・リーガー Frank Rieger 1971年旧東ドイツブランデンブルク州生まれ。ハッカー、コラムニスト、インターネットアクティビスト。通信セキュリティ企業の技術最高責任者。 Chaos Computer Clubのスポークスマンの一人。他多々。
訳者=きもと さかえ 年齢不詳 ロンドン生まれ。ボン大学卒。ベルリン在住。
内容=プロローグとして、日本の読者に向けて12頁にわたり解説がついている。この中に、本書の副題にあるインダストリー4.0の説明もある。これは第4次産業革命とも呼ばれるプロジェクトで、ソフトウェア、ロボットとネットワーク化による製造現場の変革推進である。
二部に分かれていて、第一部では畑からパンになるまでを現場見学ツアーに参加したかのように案内、この製品が無人化が進むロジスティクスによって、整然と迅速に消費者のもとへ届けられるまでを見せる。
第二部では、このような機械労働の影響、労働の未来を考察する。まず、運転手のいない自動車について。次に、しかし機械は人のためにあるのだ、人に対してやさしくあるためには、を考える。最後に置かれているのが「知能の自動化」だ。
この後にエピローグとして19頁があり、ここに著者ふたりの思想が織り込まれている。
感想=水車小屋から始まったパン作りが、ドイツでは今や、日に千トンの穀物を完全自動で製粉加工する。これが多種類の製品となり包装されて消費者へ届く。
これはドイツ国内の話だが、日本も同じだ。最終段階のロジスティクスも、アマゾン・ロジスティクスと付き合っていると、今やこれが当然、自然にさえ感じられる。
畑で大働きをした夫婦が疲れ切って眠っている真夜中に、屋根裏から小人さんたちが現れて働いてくれました、というファンタジーを超える働きをしてくれる今時の機械。
第一部を読んで、これが今なのだと、少しも驚かなかった。製造業だけではないことは、いまどきの銀行を見ればわかる。
第二部の運転手のいない自動車についても、ドイツも日本も同じだ、何が同じかというと、実用に至っていない点が同じなのだ。立ちふさがる難関を解決するには、と著者ふたりは、カメラ、センサー、などなど思案しているのがわかる。
この難関突破作戦の行く手に立ちはだかっているのは、安全面、事故のリスクの先にある責任や社会の判断などで、文面は機械技術から浮遊した言葉、たとえば賠償、義務、考慮、悪意、攻撃、感情的、禁止令などなどが、並んでいるというよりも、ひしめく。
最後に記されるのが、事もあろうに脳みそのロボット化である。
ここが読みごたえのある部分であり、読むだけではなく、読者が先頭に立って考えを進める必要がある部分だ。
これを詳細に語ることは、本書を読まずして内容を入手することにつながるために伏せるが、一つ例を挙げると、取材し、文章化する場合も人間の頭が不要になるという。
スポーツ記事を書く場合を例に挙げているが、野球なら野球専門、サッカーならサッカーに詳しい記者が腕によりをかけてレポートするのと肩を並べる記事になるだろう。これもまた、ドイツだけの話ではない、私にもわかる日本の話だ。
エピローグの最後に4行、ニコラ・テスラ(1856〜1943)電気技師、発明家の、次のような言葉が置かれている。
現在、ロボットは受け入れられたものの、その性能はまだ十分なレベルには到達していない。
21世紀には、かつての文明で奴隷が担っていた労働がロボットに取って代わられるだろう。
1世紀のうちに、それが叶わない理由は何もなく、それによって人間は、より崇高な目標を目指せるよう解放されるのである。
より崇高な目標を持つ我が身であるか、自問しよう。