科学者は戦争で何をしたか
20-12-15-14:57-
『科学者は戦争で何をしたか』著者=益川敏英(ますかわ としひで)発行=集英社 2015 集英社新書 ¥700 ISBN9784087207996
著者=1940年愛知県出身、理論物理学者。素粒子宇宙起源研究機構長、京都大学名誉教授。2008年ノーベル物理学賞受賞。九条科学者の会呼びかけ人。
内容=科学者の立場から現在の社会状況を見て、歯に衣着せぬ意見を述べる。また戦争で被災した経験を語ることの意味と重要さを強調する。
感想=いつも感じることだが、科学者の書く文章は、すっきりしてわかりやすい。伝えたい内容を明確に持っているからできることだ。また、飾り言葉をくっつけないで、核心の部分を伝えようとする意欲もまた強いと感じる。
だいたい、国語の教科書には文芸作品が多すぎる。寺田寅彦の文章だったらまだ許せるが、そこいらの文豪と呼ばれる変わり者たちの寝言文は止めて欲しい。ろくでもない評論なんかも、読ませることはないじゃないか。大人だってロクに読んでもいないのだから。
それはさておき、益川さんの心意気が伝わってくる、気持ちの良い一冊だ。始めから終わりまで、恩師に思いを馳せつつ暮らしている様子が手に取るように伝わってきて、幸せだなあ、こんな先生と弟子の関係は、と心打たれた。
益川さんは研究室に籠もっている学者ではない、世界を見据えて、その中のひとりの人間だという自覚を持って生きていられる、その有り様がよく伝わってくる。戦時下における朝永振一郎博士のエピソードは非常に印象的だった。どの学者も、軍から強要されればせざるを得ない、日本に限らず、マンハッタン計画だってそうじゃないかと私は思っていたが、この状況の中の朝永博士は、ちがった。この章を、ここにコピーしたいくらいだが、最後の一行に留めよう。「でも、朝永先生はそうはしなかった。軍部に自分の研究を渡さないという意志を密かに貫かれたのだと思います。私は、それこそが本来の科学者の知恵だと思います」。
気持ちの良い本を読んで、よい考え方に出会うのは幸せなことだ。
著者=1940年愛知県出身、理論物理学者。素粒子宇宙起源研究機構長、京都大学名誉教授。2008年ノーベル物理学賞受賞。九条科学者の会呼びかけ人。
内容=科学者の立場から現在の社会状況を見て、歯に衣着せぬ意見を述べる。また戦争で被災した経験を語ることの意味と重要さを強調する。
感想=いつも感じることだが、科学者の書く文章は、すっきりしてわかりやすい。伝えたい内容を明確に持っているからできることだ。また、飾り言葉をくっつけないで、核心の部分を伝えようとする意欲もまた強いと感じる。
だいたい、国語の教科書には文芸作品が多すぎる。寺田寅彦の文章だったらまだ許せるが、そこいらの文豪と呼ばれる変わり者たちの寝言文は止めて欲しい。ろくでもない評論なんかも、読ませることはないじゃないか。大人だってロクに読んでもいないのだから。
それはさておき、益川さんの心意気が伝わってくる、気持ちの良い一冊だ。始めから終わりまで、恩師に思いを馳せつつ暮らしている様子が手に取るように伝わってきて、幸せだなあ、こんな先生と弟子の関係は、と心打たれた。
益川さんは研究室に籠もっている学者ではない、世界を見据えて、その中のひとりの人間だという自覚を持って生きていられる、その有り様がよく伝わってくる。戦時下における朝永振一郎博士のエピソードは非常に印象的だった。どの学者も、軍から強要されればせざるを得ない、日本に限らず、マンハッタン計画だってそうじゃないかと私は思っていたが、この状況の中の朝永博士は、ちがった。この章を、ここにコピーしたいくらいだが、最後の一行に留めよう。「でも、朝永先生はそうはしなかった。軍部に自分の研究を渡さないという意志を密かに貫かれたのだと思います。私は、それこそが本来の科学者の知恵だと思います」。
気持ちの良い本を読んで、よい考え方に出会うのは幸せなことだ。