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ガウディの伝言

ガウディの伝言』  著者 外尾悦郎 発行 光文社 光文社新書 2006年  ISBN 4-334-03364-4 CO271 ¥950E

 外尾悦郎(そとおえつろう)1953年生。1978年以来、スペイン、バルセロナ市のサグラダ・ファミリア贖罪聖堂の彫刻を担当。2000年に15体の天使像を完成させた。これによって、サグラダ・ファミリア「生誕の門」が完成し、2005年に世界文化遺産に登録された。
 この本は、石の彫刻をしたい、という発心から、なぜかファミリアに行き着き、いまもここにいて石に埋まっている外尾氏が、落ち着いた美しい日本語で伝えてくれるガウディ、ファミリア、その仲間たちの話である。前に読んだ『ガウディ その建築への招待』の写真と合わせ読むことで、さらに興味は増し、理解が深まった。
観光客の行列に加わり、ファミリアの階段を踏み上がっていた何年か前、実は、私は何も分からなかった。屑タイルをかき集めてベタベタと貼付けた異様な構造物。ありえないような曲線で形作られているバカでかいモノ。こんなクニャクニャした形で、よくもまあ倒れないもんだわ。未完成ですってよ、という、無知、貧弱きわまりない末端観光客だった。それなのに、度々思い出してしまう「あの建物」。なぜか気になって仕方がない、ひっかかる気持ちが、この2冊を開かせた。そして、心底感動しています。
 昨年から考えてきたことのひとつ、神がすべての上にまします、というキリスト教、イスラム教、ユダヤ教(この親類たち)の根本を理解しないことには始まらないのだ、ということが首肯され、納得がいった。外尾氏も入信されている。それでこそ、なのだった。そしてクニャクニャは、実は直線なのだった。

 生涯独身だったガウディは、晩年ファミリアに住み込んで制作に没頭していた。74歳になろうとするある日、40年来歩き慣れた道路を横断しようとして、路面電車にはねられて重体となり亡くなった。駆け寄った人々が病院へ運ぼうとしたが、あまりにも貧しい身なりをしていたために、4台ものタクシーが乗車拒否をしたと伝えられている。弟子たちが探しまわり、身元不詳のままサンタ・クルス病院の大部屋にガウディを見つけた時は深夜になっていた。2日後の葬儀では大群衆が集まったという。


ところどころに光る言葉。
 ものをつくる人間をダメにする確実な方法は、全体を考えさせず、細かい作業をひたすら義務としてやらせることです。そうするともう、現場での新しい発想が生まれてこなくなるだけでなく、いかに手を抜くかということばかり考える人が現れ……

 サグラダ・ファミリアのような場所で彫刻家として仕事をしていると、どうしても、人間の幸せとは何だろうということを考えざるを得ないんですが、それは一つには、どれだけ何かを愛し、その自分でないもののために生きられているかということではないかと思います。自分というのは、他があって初めて存在するものです。その他を利用し、自分の名誉や財産のためだけに生きようとしている人は、どこまで行っても満たされず、精神的に痩せ細っていくものでしょう。そうではなく、他のために生き、それによって自分も満たされるということ。そういう関係のなかにこそ、人間が求めるべき幸せがあるような気がします。



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