皮膚は「心」を持っていた!
29-10-17-10:59-
『皮膚は「心」を持っていた!』著者=山口 創 発行=青春出版社2017年 サイズ=新書版 192頁 ¥1004 ISBN9784413045193
著者=1967年、静岡県生まれ。早稲田大学大学院人間科学研究科博士課程修了。専攻は、健康心理学・身体心理学。現在、桜美林大学リベラルアーツ学群教授。臨床発達心理士。著書に『皮膚感覚の不思議』『人は皮膚から癒される』など
内容=皮膚が人の心とどのようにつながっているか、を臨床発達心理士の立場から解説。さらに皮膚感覚を実生活に応用し、活かす方法を述べている。
感想=著者は約10年前から同種の本を書いている。前著『皮膚感覚の不思議』では「先天性無痛症」などの皮膚の病気に関する記述や専門的な知識、例えばノシセプチンという脳内物質について書かれていたが、本書では実生活に応用できる時代に即した内容となっている。
皮膚というと「お肌のお手入れ」的な面に注意が向けられて、清潔にすること、みずみずしく保とうという努力に力を注ぐ気配が見える。私はシワシワになることに対して関心が薄く、ほとんど手入れ的なことをしない。基礎化粧品と呼ばれるものを買ったことがない。おまけに窓を開けっ放しの車で走り回っていたこともあり、目も当てられない「お肌」だ。けれども人のシワの流れや動きには注意深い。
もう一つ、指先の皮膚感覚について関心を持っている。どうしてかというとセロテープやメンディングテープを使うときに切り口が見つからないことがある。特に最近流行のメンディングテープは色や模様が賑やかについていて見えにくい。これがなんと、眼鏡をかけても見えないが、指先を這わせて行くと一発で見つかるのだ。皮膚って鋭いなあと感じているので、日常の皮膚感覚について詳しく知りたいと思ったのだった。
はたして本書は期待通り「皮膚は露出した脳」「皮膚は音を聞いている」「超音波や低周波がわかる」などの内容があり、目はごまかせても皮膚はごまかせないと出ていた。皮膚を大切に深く理解し、普段の暮らしの中で役立てて行く方法、イライラや不安解消のために皮膚をどう扱ったら良いのかなどを詳しく解説してくれている。
本書とは関係ないが日常の食器洗いについて考えていることがある。TVの食器洗いの洗剤CMで汚れた食器を蛍光発色させて、この通りバイキンがありますよ、この洗剤を使うと、ほら減りました! と見せている。減りましたと言っているが完全に消えたわけではなく、バイキン存在の証拠である蛍光発色はあるのである。私は水道の流水の下で皿洗いをするときに指先の感覚に頼っている。指先が綺麗と言ったら綺麗。洗剤で泡立てたスポンジで洗っても、その後に指先で調べると綺麗ではない部分がある。
指の腹は信用できる、と私は感じている。そして一心に指先の声を聞いているとき、私は何を見ているかというと何も見ていないのだ。目を閉じているわけではないが、視力を全く使っていないのだ。
話が猫の富士に飛びますが、富士を散歩させると興味のある場所を嗅いでいる。必ず臭いを取る場所は猫道の曲がり角だ。角々で猫たちは自分の体、特に耳の後ろから肩にかけた首筋の臭いを力を込めてなすりつけてゆく。後から通る猫たちは、誰が、いつ、このブロック塀の角を曲がって、どの方向に去ったかを受け取っている。相当量の情報が得られているはずだ。ブロック塀の他に小枝の場合もあるし、一枚の葉の裏側の場合もある。熱心に情報を取ろうとする富士は、鼻先からではなく鋤鼻器官という口の中の、上アゴの歯の根元に開口している嗅覚器官を使っていることもある。その様子は、私がセロテープの切り口を指先に聞いている時とそっくり同じなのだ。つまり目を開いてはいるが見ていない。私は触覚を使い、富士は嗅覚を使い、目を忘れているのだった。
著者=1967年、静岡県生まれ。早稲田大学大学院人間科学研究科博士課程修了。専攻は、健康心理学・身体心理学。現在、桜美林大学リベラルアーツ学群教授。臨床発達心理士。著書に『皮膚感覚の不思議』『人は皮膚から癒される』など
内容=皮膚が人の心とどのようにつながっているか、を臨床発達心理士の立場から解説。さらに皮膚感覚を実生活に応用し、活かす方法を述べている。
感想=著者は約10年前から同種の本を書いている。前著『皮膚感覚の不思議』では「先天性無痛症」などの皮膚の病気に関する記述や専門的な知識、例えばノシセプチンという脳内物質について書かれていたが、本書では実生活に応用できる時代に即した内容となっている。
皮膚というと「お肌のお手入れ」的な面に注意が向けられて、清潔にすること、みずみずしく保とうという努力に力を注ぐ気配が見える。私はシワシワになることに対して関心が薄く、ほとんど手入れ的なことをしない。基礎化粧品と呼ばれるものを買ったことがない。おまけに窓を開けっ放しの車で走り回っていたこともあり、目も当てられない「お肌」だ。けれども人のシワの流れや動きには注意深い。
もう一つ、指先の皮膚感覚について関心を持っている。どうしてかというとセロテープやメンディングテープを使うときに切り口が見つからないことがある。特に最近流行のメンディングテープは色や模様が賑やかについていて見えにくい。これがなんと、眼鏡をかけても見えないが、指先を這わせて行くと一発で見つかるのだ。皮膚って鋭いなあと感じているので、日常の皮膚感覚について詳しく知りたいと思ったのだった。
はたして本書は期待通り「皮膚は露出した脳」「皮膚は音を聞いている」「超音波や低周波がわかる」などの内容があり、目はごまかせても皮膚はごまかせないと出ていた。皮膚を大切に深く理解し、普段の暮らしの中で役立てて行く方法、イライラや不安解消のために皮膚をどう扱ったら良いのかなどを詳しく解説してくれている。
本書とは関係ないが日常の食器洗いについて考えていることがある。TVの食器洗いの洗剤CMで汚れた食器を蛍光発色させて、この通りバイキンがありますよ、この洗剤を使うと、ほら減りました! と見せている。減りましたと言っているが完全に消えたわけではなく、バイキン存在の証拠である蛍光発色はあるのである。私は水道の流水の下で皿洗いをするときに指先の感覚に頼っている。指先が綺麗と言ったら綺麗。洗剤で泡立てたスポンジで洗っても、その後に指先で調べると綺麗ではない部分がある。
指の腹は信用できる、と私は感じている。そして一心に指先の声を聞いているとき、私は何を見ているかというと何も見ていないのだ。目を閉じているわけではないが、視力を全く使っていないのだ。
話が猫の富士に飛びますが、富士を散歩させると興味のある場所を嗅いでいる。必ず臭いを取る場所は猫道の曲がり角だ。角々で猫たちは自分の体、特に耳の後ろから肩にかけた首筋の臭いを力を込めてなすりつけてゆく。後から通る猫たちは、誰が、いつ、このブロック塀の角を曲がって、どの方向に去ったかを受け取っている。相当量の情報が得られているはずだ。ブロック塀の他に小枝の場合もあるし、一枚の葉の裏側の場合もある。熱心に情報を取ろうとする富士は、鼻先からではなく鋤鼻器官という口の中の、上アゴの歯の根元に開口している嗅覚器官を使っていることもある。その様子は、私がセロテープの切り口を指先に聞いている時とそっくり同じなのだ。つまり目を開いてはいるが見ていない。私は触覚を使い、富士は嗅覚を使い、目を忘れているのだった。