ある日 丘の上で
02-10-21-16:44-
ある日 丘の上で 西 一知
数字が
ある日 丘の上で
無数の天使となって散らばり
転げ回り
みるみるうちに見えなくなってしまう
丘のみえる町は
その日から静かになり
じわじわと病気が広がり始める
人びとは窓も扉もしめ
通りへ出なくなる
学校も店も銀行も閉ざされる
だが病気は
どんな戸のすき間からも
しのび込む
しめた扉の内側で
人びとはひっそりと死ぬ
町中を屍臭がおおった
人びとの姿はみえない
新興住宅地の家々は
皆真新しく
児童遊園地には花もいっぱい
小鳥もいっぱい
空にはきょうも太陽が
何ごともなかったように輝いている
2010・3・28 夜
西 一知氏は、1929年 横浜生まれ
2010年 5月4日 肝臓癌にて死去 81歳
岩手県滝沢市滝沢村にて
この詩は、亡くなる37日前に書かれた。
今、滝沢村に、亡くなられた場所に、西 一知記念館があります。
わたしは、この詩を、2021年9月末に見つけた。
詩の第一行目は、神様からもらう、と言ったのは田村隆一さんです。
今月から、作品一編のみを取り上げることも、試みることにいたしました。
数字が
ある日 丘の上で
無数の天使となって散らばり
転げ回り
みるみるうちに見えなくなってしまう
丘のみえる町は
その日から静かになり
じわじわと病気が広がり始める
人びとは窓も扉もしめ
通りへ出なくなる
学校も店も銀行も閉ざされる
だが病気は
どんな戸のすき間からも
しのび込む
しめた扉の内側で
人びとはひっそりと死ぬ
町中を屍臭がおおった
人びとの姿はみえない
新興住宅地の家々は
皆真新しく
児童遊園地には花もいっぱい
小鳥もいっぱい
空にはきょうも太陽が
何ごともなかったように輝いている
2010・3・28 夜
西 一知氏は、1929年 横浜生まれ
2010年 5月4日 肝臓癌にて死去 81歳
岩手県滝沢市滝沢村にて
この詩は、亡くなる37日前に書かれた。
今、滝沢村に、亡くなられた場所に、西 一知記念館があります。
わたしは、この詩を、2021年9月末に見つけた。
詩の第一行目は、神様からもらう、と言ったのは田村隆一さんです。
今月から、作品一編のみを取り上げることも、試みることにいたしました。