猫になった山猫
04-03-18-09:34-
『猫になった山猫』著者=平岩由技子(ひらいわ ゆきこ) 発行=築地書店 2002年 サイズ=19cm 224頁 ISBN4-8067-1241-8
著者=イヌ科ネコ科の研究で知られた故平岩米吉の長女。犬、猫、狐、狸、ハイエナ、山猫などに囲まれて育ち、生物の生態や遺伝に興味を持つ。父の研究の助手をつとめ、父の意志を継いで平岩犬科生態研究所、動物文学会を主宰。季刊誌「動物文学」の編集、発行人。また、洋猫との混血のため絶滅に瀕した日本猫の保存運動に力を尽くしている。著書に『狼と生きてー父平岩米吉の思い出』1998年刊(市場になし)
内容=巻頭に4頁のカラー写真。それはナイル川下流のピラミッド、遺跡の風景で、ここで30万体の猫のミイラが発掘された故に掲載している。加えて家猫の祖先と言われるリビア山猫と、混血の進んだ現在の猫たちの写真、そして表紙カバーにも使っているブラジル、グアジャ族の母が自分の乳を孤児に飲ませている写真だ。この写真はアマゾンの本書にリンクしますので、ご覧になってください。
この写真群からわかるように、本書は猫の源流から現在までを探索、見通しつつ、実際に飼育、研究をしている立場から見た猫についての本。
感想=犬との付き合いを猫に替えたため、猫に関する本を探していて出会った本。
アマゾンで本書を発見した時、著者の名が平岩とあったので、もしかして日本オオカミと日本犬の権威、平岩米吉先生に関係があるか? と見たら、なんと先生の長女だった。赤ん坊のころから犬に囲まれ、父に育まれた娘が「私は猫をやる」と宣言したとき父は「大変だよ」と言ったそうだ。
その半年後に父は他界し、日本猫を軸に、原初の猫からの軌跡を追い、研究し、保護保存に尽力す。
この本は、父娘二代にわたるヒトとイヌ・ネコに関する研究と愛の結晶である。「本書を亡き父、平岩米吉と その父の生涯を支え いまは私の心のよりどころである 母、平岩佐与子にささげます。」と巻頭に献辞がある。数多の献辞の中、私はこれほどの輝く献辞に出会ったことがない、このような献辞を捧げることができる、溢れる愛に目がくらむ思いがする。
内容紹介で記した通り、本書のカバー写真は、親を失った子豚に乳を飲ませる、ブラジル、グァジャ族の母。これは野生の獣が人との絆を作り、家畜となる第一歩だ、と解説している。
人と野生動物との絆の始まりが「乳」にあることは『神・人・家畜』谷泰著にも詳しく書かれており、飢えたヒトが、野生動物から最初にもらったものは乳であった、と考察している。平岩由伎子氏が、源まで遡り研究を進めた原点としての、これはモニュメントだろう。
日本猫の保存運動では、日本列島くまなく探しまわる様子が描かれ、ついで日本ネコの繁殖の努力が語られる。
砂漠が猫の原点だったことから始まる猫の歴史では、19世紀以降の世界中の乱雑な人の繁殖行為が、現在のCMに出演するタレント猫につながって見えてきて考えさせられる。
後編の猫の生活では、生殖のパターン、縄張りや雌雄の特徴、犬との対比などがふんだんに盛り込まれる。
猫の源流をたどり砂漠の生まれだったことが判明、今の猫たちに共通する腎臓の故障の原点である、ということを私は初めて知った。そうだったのか、という発見が盛り込まれている流石の平岩、という貴重な本。
内容とは関係がないけれど、親の後を継いで仕事を進める子の姿に心を揺さぶられ、親も子もこれ以上の幸せはないだろうとため息が出た。動物関係だけを集めたライブラリーの書架に、父娘の本を並べ置くことができた私も大満足だ。
著者=イヌ科ネコ科の研究で知られた故平岩米吉の長女。犬、猫、狐、狸、ハイエナ、山猫などに囲まれて育ち、生物の生態や遺伝に興味を持つ。父の研究の助手をつとめ、父の意志を継いで平岩犬科生態研究所、動物文学会を主宰。季刊誌「動物文学」の編集、発行人。また、洋猫との混血のため絶滅に瀕した日本猫の保存運動に力を尽くしている。著書に『狼と生きてー父平岩米吉の思い出』1998年刊(市場になし)
内容=巻頭に4頁のカラー写真。それはナイル川下流のピラミッド、遺跡の風景で、ここで30万体の猫のミイラが発掘された故に掲載している。加えて家猫の祖先と言われるリビア山猫と、混血の進んだ現在の猫たちの写真、そして表紙カバーにも使っているブラジル、グアジャ族の母が自分の乳を孤児に飲ませている写真だ。この写真はアマゾンの本書にリンクしますので、ご覧になってください。
この写真群からわかるように、本書は猫の源流から現在までを探索、見通しつつ、実際に飼育、研究をしている立場から見た猫についての本。
感想=犬との付き合いを猫に替えたため、猫に関する本を探していて出会った本。
アマゾンで本書を発見した時、著者の名が平岩とあったので、もしかして日本オオカミと日本犬の権威、平岩米吉先生に関係があるか? と見たら、なんと先生の長女だった。赤ん坊のころから犬に囲まれ、父に育まれた娘が「私は猫をやる」と宣言したとき父は「大変だよ」と言ったそうだ。
その半年後に父は他界し、日本猫を軸に、原初の猫からの軌跡を追い、研究し、保護保存に尽力す。
この本は、父娘二代にわたるヒトとイヌ・ネコに関する研究と愛の結晶である。「本書を亡き父、平岩米吉と その父の生涯を支え いまは私の心のよりどころである 母、平岩佐与子にささげます。」と巻頭に献辞がある。数多の献辞の中、私はこれほどの輝く献辞に出会ったことがない、このような献辞を捧げることができる、溢れる愛に目がくらむ思いがする。
内容紹介で記した通り、本書のカバー写真は、親を失った子豚に乳を飲ませる、ブラジル、グァジャ族の母。これは野生の獣が人との絆を作り、家畜となる第一歩だ、と解説している。
人と野生動物との絆の始まりが「乳」にあることは『神・人・家畜』谷泰著にも詳しく書かれており、飢えたヒトが、野生動物から最初にもらったものは乳であった、と考察している。平岩由伎子氏が、源まで遡り研究を進めた原点としての、これはモニュメントだろう。
日本猫の保存運動では、日本列島くまなく探しまわる様子が描かれ、ついで日本ネコの繁殖の努力が語られる。
砂漠が猫の原点だったことから始まる猫の歴史では、19世紀以降の世界中の乱雑な人の繁殖行為が、現在のCMに出演するタレント猫につながって見えてきて考えさせられる。
後編の猫の生活では、生殖のパターン、縄張りや雌雄の特徴、犬との対比などがふんだんに盛り込まれる。
猫の源流をたどり砂漠の生まれだったことが判明、今の猫たちに共通する腎臓の故障の原点である、ということを私は初めて知った。そうだったのか、という発見が盛り込まれている流石の平岩、という貴重な本。
内容とは関係がないけれど、親の後を継いで仕事を進める子の姿に心を揺さぶられ、親も子もこれ以上の幸せはないだろうとため息が出た。動物関係だけを集めたライブラリーの書架に、父娘の本を並べ置くことができた私も大満足だ。