文房 夢類
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文房 夢類

書籍文化の未来

書籍文化の未来』副題=電子本か印刷本か 著者=赤木昭夫(あかぎ あきお)発行=岩波書店 岩波ブックレットNo.873 2013年 64頁 19cm 500 ISBN978-4-00-270873-7
著者=1932年生まれ。NHK解説委員、慶應自塾大学教授、放送大学教授の後、著述。著書に『インターネット社会論』など
内容=フランクフルト書籍見本市を見た感想・電子化の現在・生き残る書店と出版社について・印刷本と電子本は対決か共存か、の4つの項目。
感想=フランクフルトの書籍の見本市は、見本市の元祖で、16世紀から定期的に開かれている伝統ある書籍集結場。著者が見た2012年について記している。参加国100国、展示総数7400部。地元ドイツが2491,英国が648,アメリカが3位で616、フランス、イタリア、オランダと続く。アジアでは中国が1位で164、次が韓国で46。日本は、アジアの中でも3位と落ち込み、32部だったという展示状況が示される。この数字をどう考えるか、著者の見解と平行して日頃感じていることと思い合わせた。アメリカのビッグ6と言われる出版社の現況も興味深い。世界の知の生産状況が一望できる各種のグラフがあり、日本がいま、世界のなかで、どの場所にいるかを知る事ができた。それは、あまり明るい未来とは思えないものだった。というより深刻にまずいじゃないか、ということだ。著者は、日本の有様を「知的停滞どころか、知的後退の兆し」と書いている。
肝心の電子本か、印刷本か、という問題では、電子本を購入して読む場合だけを取り上げている。私自身は、購入は二次的問題なので、この議論には参加しないのだが、ほとんどのユーザーは、アマゾンなどから買って読むことになる。その場合、買ったにしても所有しているわけではない、というところが一番の問題だし、案外知られていないのではないかと思った。電子本は、中身を販売するのではない、中身の使用を許可するライセンスだ。故に、違法行為は監視されているわけで、一方的にアマゾンがリーダーの中身を読めなくすることも、消去することもできる。
では、リーダーで読む場合の感触は、印刷本と比較して、どこが違うだろう。まず、読む速度について、電子本のほうが20~30%遅いという。また、存在感が希薄であるなど欠点がある一方、電子本は、フォントサイズを変えることが出来るし検索もできる、居ながらにして瞬時に購入できる、持ち運びが便利、アップデートが可能、など利点は多い。
思うに、さらにリーダーは進化するだろう、たぶんパソコン内のツールの一つとして。ユーザーが増えるのは確実だ。やがて印刷本を読んだことがない世代が生まれるにちがいない。しかし、一方では印刷本は決して消えず、しかし増えず、永遠というのが大げさにしても、長く続くだろう。和紙の和綴じの本や、羊皮紙の本は、いまも作られ続けているが、好事家の世界にいるのではなかろうか。それよりも、もっと大規模に、実用として作られ続けることはまちがいない、と私は思います。
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