彼方から
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『彼方から』著者=ひかわ きょうこ 発行=白泉社2004年 全7巻 文庫版 ISBN4592887379 @¥648 平均360頁
著者=1957年 大阪堺市出身 漫画家
内容=タイムスリップ・ファンタジー漫画。ごく普通の女子高生、典子が異世界へ飛ばされる。言葉も通じない世界でノリコとして生きて行く事になるが、この異世界では、樹海に「目覚め」が現れるという予言があり、「目覚め」を捕らえるための探索隊が出ていた。そこへノリコが現れたという設定で、イザークという探索隊のはしくれの美形青年がノリコを発見する。
物語は、ここから始まる。
イザークは「目覚め」を見つけ次第殺さなければならない運命を担っていた。それは身の内に「天上鬼」という悪の怪物を秘めている故だった。が、無邪気に慕ってくるノリコを庇うことになる。イザークは文句なしに格好いい。ノリコは可愛いの極致。数々の危機を乗り越えて「天上鬼」を克服したイザークは浄化される。さいごに二人は光の世界へ向かう。
感想=アクションシーンが多く、ダイナミックに描かれている。繊細な長い線は、あくまでも細くしなやかだが、非常な早さを持って描かれていて、大きな魅力だ。絵の美しさ、迫力、そしてなんといっても主人公ノリコの可愛いことといったらない。ノリコとは対照的に鋭角的に表現されるイザークの魅力は、ノリコのかわいらしさを支えて充分だ。
「目覚め」とは、ゴータマ・ブッダの日本語訳である。樹木の精が登場して主人公一行を支えるが、ブッダの樹は菩提樹、菩提樹とは「目覚めの樹」と訳される。困難を克服しつつ、光の世界へ向かうという、この物語は、作者が12年かけて描いた力作であり、たぶん代表作となる作品だが、7冊の、どこを開いても宗教色は微塵もない。たぶん、読者である少女たちは、お釈迦様など夢にも思わずに楽しみつつ読み終えるのではないだろうか。
ノリコは言葉が通じない、と分かると学び始める。困難にぶつかると明るくがんばる。しかし何の取り柄もない、ただの女の子なのだ。
この作品で肝心なところは、イザークが天上鬼に変身したとき、その怪物を見たノリコが、いささかも驚かず、たじろぐこともなく、全幅の信頼を寄せて愛する心を伝える場面だ。外見ではない、悪事悪行、乱暴を働いたとしても問題ではないという価値観を持って、本人へ愛を傾ける部分だ。
終巻にに至り、イザークの悪は浄化されて奥底に眠る美しい心が現れる。ノリコの力は、とくに何もない、信じ、ありがとうと言うだけ、というものなのだが、これによってイザークは、身の内から悪が噴出する恐怖から解放される。
イザークが何故「天上鬼」を抱えて苦しまなければならなかったか、そこに疎外されてきた辛い過去の設定が置かれている故に、イザークに同感する読者も多いことだろう。
著者=1957年 大阪堺市出身 漫画家
内容=タイムスリップ・ファンタジー漫画。ごく普通の女子高生、典子が異世界へ飛ばされる。言葉も通じない世界でノリコとして生きて行く事になるが、この異世界では、樹海に「目覚め」が現れるという予言があり、「目覚め」を捕らえるための探索隊が出ていた。そこへノリコが現れたという設定で、イザークという探索隊のはしくれの美形青年がノリコを発見する。
物語は、ここから始まる。
イザークは「目覚め」を見つけ次第殺さなければならない運命を担っていた。それは身の内に「天上鬼」という悪の怪物を秘めている故だった。が、無邪気に慕ってくるノリコを庇うことになる。イザークは文句なしに格好いい。ノリコは可愛いの極致。数々の危機を乗り越えて「天上鬼」を克服したイザークは浄化される。さいごに二人は光の世界へ向かう。
感想=アクションシーンが多く、ダイナミックに描かれている。繊細な長い線は、あくまでも細くしなやかだが、非常な早さを持って描かれていて、大きな魅力だ。絵の美しさ、迫力、そしてなんといっても主人公ノリコの可愛いことといったらない。ノリコとは対照的に鋭角的に表現されるイザークの魅力は、ノリコのかわいらしさを支えて充分だ。
「目覚め」とは、ゴータマ・ブッダの日本語訳である。樹木の精が登場して主人公一行を支えるが、ブッダの樹は菩提樹、菩提樹とは「目覚めの樹」と訳される。困難を克服しつつ、光の世界へ向かうという、この物語は、作者が12年かけて描いた力作であり、たぶん代表作となる作品だが、7冊の、どこを開いても宗教色は微塵もない。たぶん、読者である少女たちは、お釈迦様など夢にも思わずに楽しみつつ読み終えるのではないだろうか。
ノリコは言葉が通じない、と分かると学び始める。困難にぶつかると明るくがんばる。しかし何の取り柄もない、ただの女の子なのだ。
この作品で肝心なところは、イザークが天上鬼に変身したとき、その怪物を見たノリコが、いささかも驚かず、たじろぐこともなく、全幅の信頼を寄せて愛する心を伝える場面だ。外見ではない、悪事悪行、乱暴を働いたとしても問題ではないという価値観を持って、本人へ愛を傾ける部分だ。
終巻にに至り、イザークの悪は浄化されて奥底に眠る美しい心が現れる。ノリコの力は、とくに何もない、信じ、ありがとうと言うだけ、というものなのだが、これによってイザークは、身の内から悪が噴出する恐怖から解放される。
イザークが何故「天上鬼」を抱えて苦しまなければならなかったか、そこに疎外されてきた辛い過去の設定が置かれている故に、イザークに同感する読者も多いことだろう。