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モンゴル帝国誕生

『モンゴル帝国誕生』副題=チンギス・カンの都を掘る 著者=白石典之(しらいし のりゆき)発行=講談社2017年 講談社選書メチエ 248頁 ISBN9784062586559 ¥1782
著者=1963年群馬県出身筑波大学大学院歴史人類学博士課程単位取得退学。博士(文学)新潟大学人文学部教授、専門はモンゴルの考古学。
内容=著者が近年、発掘しているチンギスの都、アウラガ遺跡を元に、モンゴルの民衆の生活を支え続けたチンギスの実像を探求する。
感想=ある湖のほとりで、ひとりぼっちで佇んでいた青年に声をかけたところ、モンゴルからの留学生だった。
モンゴルについて知ってますか? という彼の問いに、お相撲さん! と答えた私に彼は「すもうだけでは、ないです」と。
ジンギスカン鍋。それとアレクサンダー大王と並ぶ世界制覇の英雄だということ。知ってますか? と問われて出てくる答えはこれだけだった。このことがきっかけで、モンゴルについて知ろう、と思ったことが、本書を開いたきっかけだった。

ジンギスは、ペルシャ語系、チンギスはモンゴル本国をはじめ漢文系資料に依拠した呼び方だという。
著者の専門はモンゴルの考古学。読むうちにわかったことは、資料文献に埋まってじっとしている学者ではないということだった。
モンゴルと日本と、どっちに重心がかかっているのだろう、モンゴルの人たちとの交流を始め、気候風土、森林河川、植物の植生などあらゆる方面にわたり、まるで土地もんである。さらに専門の考古学に隣接する分野の研究者たちとの交流が密で、全員が一塊となって研究を進めている様子が手に取るように伝わってきた。これは素敵なスタンスだ。周辺との連携を持つ姿勢が、各界に見られるようになってきた。

遊牧というから、あっちへウロウロ、こっちへホイホイ、気の向くままに羊や牛を追って移動しているんだと思っていたが、これはとんでもないことだった。誠にシステマティックな行動であった。遊牧民について浅薄な先入観を持っていたものが見事に覆された。
モンゴルの英雄チンギス・カンは、騎馬軍団と武器を持って次々に領地を増やし、一大帝国を夢見るという野心の人ではなかった。このイメージも変わった。
その暮らしは質素質実であり、気候に従い規則的な移動を繰り返しながらも、定着的集落を設けて農耕もし、鉄鍛冶工房を運営していた。重要視していたのが馬、鉄、道。
モンゴルの馬は、サラブレッドの体高が160cmであるのに比べて130cmと小柄で、幼児も馬を乗りこなすという。
現地を熟知し、愛情を持って見つめる著者の目を通して、まるでモンゴルに連れて行ってもらったかのように馬の姿、川の流れ、馬の喜ぶ草地、広い森林が見えて、日本とは比較にならない厳しい寒さも感じることができる。
チンギスは貪欲に領地を増やす野望の人ではなかった、モンゴルの民を第一に思う、私利私欲のない人だった。
驚くべきことは、彼のセンスが時代を超越して現在の世界に通用する価値観と判断を持っていたことだ。
道を作り駅舎を作る。これは現在のハイウェイと重なるものだが、要するに交通インフラの整備である。
彼が、今に伝えられる英雄として名を残したのは、モンゴルの地を知悉した上に構築した先端感覚の経営力にあったのではないか。
魅力ある国、学ぶところの多いチンギスカンだ。
巻末に参考文献と索引。
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