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冷血 高村薫


『冷血』高村薫著 毎日新聞社2012年発行 ISBN978-4-620107899 ¥@1600 上下2巻 187mmx132mm P290x2
著者=1953年大阪生まれ ICU教養学部卒業 小説家 『マークスの山』『照柿』『レディ・ジョーカー』ほか多数。
内容=トルーマン・カポーティの『冷血』へのオマージュと言われる一家4人惨殺事件を扱う創作。従来のサスペンスから深化した心理風景が描かれる。
感想=カポーティの同名の傑作と、世田谷一家殺人事件が折り重なって、この作品の上を覆う。前科者の2人の男が夫婦と子供2人を殺すことから始まり、逮捕されて死刑まで、なぞることが目的であるかのように、そっくりである。上巻で事件と犯人逮捕までが描かれる。倒叙形式ではなく、この後が本番です、という意気込みで著者は犯人の心理を追い、掘り下げようとする。下巻が読みどころ。結局、誰が冷血の体質を持っていたのか、いまも冷血であるのは誰か、という作者の問いかけが聞こえるようだ。『神の火』を一編読んだだけの、けして熱心な読者ではない私だが、高村さんに、私は好感と同感を併せ持っている。弱者への温かい気持ち、『神の火』にあるような原発への怒りは、人としてのありようを、小説家としてより以前の人間として考える姿勢を持っていて、私はここに共鳴している。身辺雑記を起承転結もなく綴り、随筆と銘打つならともかく、小説として発表し、ほかに創作がないような「作家」は、私の興味の外にある。ただ、ここで同業として感じたことを言うと、果敢に立ち向かった取材、スロットマシン、クルマ、医学分野などの成果は、これなくして成立しない見事さだが、取材時の印象が強すぎて、多少知っている側からの眺めは、過剰に過ぎるというか、感じちゃってはまっている、みたいな感じを受けた。実際の地名、施設名などを出す方法は、臨場感抜群、私は町田街道、R16など庭のようなものだから、すっかり楽しんだ。これはよいのだが、姉と弟の2人とも「付属」に通わせたのは、むしろ私立の一貫性の学校などを選んだ方がよかったのではないか、抽選がある学校への姉弟入学は、この設定に必要性がない限り不自然さが目立ってしまう。つまらぬ設定の問題だが読者はつまらぬ部分に引っかかるものではないだろうか。
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