真贋のカチマケ 鑑定士の仕事
13-03-15-08:53-
『真贋のカチマケ』副題=鑑定士の仕事 著者=中島誠之助(なかじま せいのすけ)発行=二見書房 2015年 20cm 493頁 ¥2700 ISBN9784576141633
著者=1938年東京生まれ 戸栗美術館理事。生活雑器であった古伊万里磁器の魅力を見出し、広めた。テレビ番組「なんでも鑑定団!」にレギュラー出演。
内容=骨董の楽しみかた、掘り出し物の見つけかたなどを楽しく語る。
感想=縁あって所有している物を鑑定して貰い、金額を知る、これを遊びとして見せている番組をみて、鑑定士・中島誠之助さんを知った。私は、物の値段にこだわる価値観とは別世界にいるので、お金に換算することには興味がない。ないけれど鑑定する方々の目を見ることが楽しみだし、勉強になるので好きな番組だ。
この番組の中で「焼き物」を鑑定するのが中島さん。本書では、お馴染みの口調で、本物の心を広げて見せてくれる。東京ッ子の気っぷの良さ、歯切れの良さが心地よい。幼いときに両親を失い、並ではない少年時代から今日までを、さらっと後ろ手に隠して語らず、これから骨董と付き合いたい人たちに向けて、愛情をこめて伝えてくれる極意。偽物を掴まされた失敗談、「育てる」と称して偽物を作る一流の腕前の専門家たちの話。約500頁の内容は、隅から隅まで面白い。
ただ、最後の章には、焼き物の視点から辿る中国と日本の歴史が書かれている。その先には西欧の焼き物史の展望がある。この勉強ぶりは並ではない。この土台があってはじめてつきあえる「焼き物」なのだと身にしみる部分である。
ひとつの茶碗を掌に思いを馳せる。戦災ですべてを焼き払われて、もらい物や木の枝の箸で暮らしていたとき、思いもかけず焼け跡の土の下から掘り出した無傷の子供茶碗。これはひーばあさんがね、と伝えられていったら意味があるんじゃないか、と思ったりしながら読んだ。
中島誠之助さんは書いている、偽物は、見た瞬間に何とも言えないイヤな感じがする。
そうだろうな、と思う。人間だって同じだろう、「本物に間違いないですね」と会った瞬間に感じられる人間。本物人間になること、本物を見る力のある者になること、これは一朝一夕にはいきそうもない。年を経たからといって備わるものではなさそうだ。
著者=1938年東京生まれ 戸栗美術館理事。生活雑器であった古伊万里磁器の魅力を見出し、広めた。テレビ番組「なんでも鑑定団!」にレギュラー出演。
内容=骨董の楽しみかた、掘り出し物の見つけかたなどを楽しく語る。
感想=縁あって所有している物を鑑定して貰い、金額を知る、これを遊びとして見せている番組をみて、鑑定士・中島誠之助さんを知った。私は、物の値段にこだわる価値観とは別世界にいるので、お金に換算することには興味がない。ないけれど鑑定する方々の目を見ることが楽しみだし、勉強になるので好きな番組だ。
この番組の中で「焼き物」を鑑定するのが中島さん。本書では、お馴染みの口調で、本物の心を広げて見せてくれる。東京ッ子の気っぷの良さ、歯切れの良さが心地よい。幼いときに両親を失い、並ではない少年時代から今日までを、さらっと後ろ手に隠して語らず、これから骨董と付き合いたい人たちに向けて、愛情をこめて伝えてくれる極意。偽物を掴まされた失敗談、「育てる」と称して偽物を作る一流の腕前の専門家たちの話。約500頁の内容は、隅から隅まで面白い。
ただ、最後の章には、焼き物の視点から辿る中国と日本の歴史が書かれている。その先には西欧の焼き物史の展望がある。この勉強ぶりは並ではない。この土台があってはじめてつきあえる「焼き物」なのだと身にしみる部分である。
ひとつの茶碗を掌に思いを馳せる。戦災ですべてを焼き払われて、もらい物や木の枝の箸で暮らしていたとき、思いもかけず焼け跡の土の下から掘り出した無傷の子供茶碗。これはひーばあさんがね、と伝えられていったら意味があるんじゃないか、と思ったりしながら読んだ。
中島誠之助さんは書いている、偽物は、見た瞬間に何とも言えないイヤな感じがする。
そうだろうな、と思う。人間だって同じだろう、「本物に間違いないですね」と会った瞬間に感じられる人間。本物人間になること、本物を見る力のある者になること、これは一朝一夕にはいきそうもない。年を経たからといって備わるものではなさそうだ。