神・人・家畜
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『神・人・家畜』著者=谷 泰 発行=平凡社1997年 ¥3800 サイズ=20cm 396頁 文献 ISBN458248123
著者=たに ゆたか 1934年福岡出身 京都大学史学科卒業 京都大学名誉教授 専門=西洋史・社会人類学。著書=『牧夫フランチェスカの一日ーイタリア中部山村生活誌』1976年平凡社『牧夫の誕生ー羊・山羊の家畜化の開始とその展開』2010年岩波書店など
内容=人が動物を家畜化して、肉を食用にし、次に乳も食用にする。家畜のはじまり、その発達を徹底したフィールドワークで探索考察してゆく。その基本に、西欧の人間・自然に対する感覚を規定した旧約聖書の基本命題があると考えをすすめる。
目次を挙げると、その内容の輪郭が分かる。1,中近東における牧畜の起原をめぐって 2,搾乳の開始とその意味 3,去勢オス誘導羊と宦官 4,都市と牧人集団 5,旧約聖書における神・人・家畜関係。巻末に注・あとがき・参考文献・主要事項索引。
感想=人類が、いつごろ動物を家畜化したか。家畜化された動物の種類は。動物の乳を人の食用にしはじめたのはいつ頃か。またその経緯は。牧畜の群を誘導する役目の動物の選び方、育て方。考古学者の、想像を絶する根気の良さと思考の深さ。読むにつれて目を見張る思いがした。
日本には、雨をあらわす言葉が多く、西欧には動物を細かく分けて名付ける文化があると言われるが、それぞれに名をつける必要のある暮らしがひろがり、人の命と動物の命が密着している様子に驚嘆した。そこでは聖書が大地と同等の重さを持ち、天空と同等の権威を示しつつ人を規制している。最終章で旧約聖書が現れる。旧約聖書を読みすすめる著者の眼は、何度も読んでいる当方の目には留まらなかった世界を勢いよく開いてくれた。そうか、こんな視点から読むと旧訳は、こんなことを語っているんだ、と眼から鱗だった。
この書物は、ほぼ400頁、しかも1頁に860字詰め、単純計算で35万字。これに多少の図表が加わる。
著者は、あとがきで次のように書いていられる。「現代的問題に直接関わりのない学術書はおよそ売れにくい。わたしは本書の原稿を書き終えたあと、枚数が多すぎるという理由で、出版を引き受けてくれる先を見出すのに長く苦慮しつづけていた。そしてほとんど絶望のはて、「出版が決まらなければ、もう墓場に一緒に持っていく」と同僚に口走った」。
ほとんど絶望した、そのあとに陽の目を見る運命が待っていた名著。学問に栄光あれ。
著者=たに ゆたか 1934年福岡出身 京都大学史学科卒業 京都大学名誉教授 専門=西洋史・社会人類学。著書=『牧夫フランチェスカの一日ーイタリア中部山村生活誌』1976年平凡社『牧夫の誕生ー羊・山羊の家畜化の開始とその展開』2010年岩波書店など
内容=人が動物を家畜化して、肉を食用にし、次に乳も食用にする。家畜のはじまり、その発達を徹底したフィールドワークで探索考察してゆく。その基本に、西欧の人間・自然に対する感覚を規定した旧約聖書の基本命題があると考えをすすめる。
目次を挙げると、その内容の輪郭が分かる。1,中近東における牧畜の起原をめぐって 2,搾乳の開始とその意味 3,去勢オス誘導羊と宦官 4,都市と牧人集団 5,旧約聖書における神・人・家畜関係。巻末に注・あとがき・参考文献・主要事項索引。
感想=人類が、いつごろ動物を家畜化したか。家畜化された動物の種類は。動物の乳を人の食用にしはじめたのはいつ頃か。またその経緯は。牧畜の群を誘導する役目の動物の選び方、育て方。考古学者の、想像を絶する根気の良さと思考の深さ。読むにつれて目を見張る思いがした。
日本には、雨をあらわす言葉が多く、西欧には動物を細かく分けて名付ける文化があると言われるが、それぞれに名をつける必要のある暮らしがひろがり、人の命と動物の命が密着している様子に驚嘆した。そこでは聖書が大地と同等の重さを持ち、天空と同等の権威を示しつつ人を規制している。最終章で旧約聖書が現れる。旧約聖書を読みすすめる著者の眼は、何度も読んでいる当方の目には留まらなかった世界を勢いよく開いてくれた。そうか、こんな視点から読むと旧訳は、こんなことを語っているんだ、と眼から鱗だった。
この書物は、ほぼ400頁、しかも1頁に860字詰め、単純計算で35万字。これに多少の図表が加わる。
著者は、あとがきで次のように書いていられる。「現代的問題に直接関わりのない学術書はおよそ売れにくい。わたしは本書の原稿を書き終えたあと、枚数が多すぎるという理由で、出版を引き受けてくれる先を見出すのに長く苦慮しつづけていた。そしてほとんど絶望のはて、「出版が決まらなければ、もう墓場に一緒に持っていく」と同僚に口走った」。
ほとんど絶望した、そのあとに陽の目を見る運命が待っていた名著。学問に栄光あれ。