知事抹殺
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『知事抹殺』副題 つくられた福島県汚職事件 佐藤栄佐久 著 平凡社 2009年9月 発行 ISBN 978-4-582-82454-4 C0095 ¥1600E サイズ 128 X 187 344ページ
著者は、1939年福島県郡山市生まれ。1983年自由民主党公認で参議院選挙当選、1988年、福島県知事。4回連続当選し、長期にわたり知事を務めた。が2006年に、汚職事件の嫌疑をかけられ辞職、のち収賄容疑で逮捕された。
本書は、著者が郡山に生まれてから今日までの歩みを克明に綴っている。そのなかでの彼の主張は「無実」の一言である。彼自身の無実だけを主張しているのではない、むしろ、周囲の人たちまでもが巻き込まれて、自殺に追い込まれ、自殺を企てた後に、いまもなお意識が戻らない人がいる、そういう多くの「殺された仲間」を抱えての主張である。
私は、冒頭にある「墓碑標」の話に強い衝撃を受けた。墓碑標という、聞いたことのないものが何か、読んでみていただきたい。一昨年、会津に行ったとき、悔しそうに話してくれた女性、ひと冬10万円はかかるんですよ、雪に! そのことも思った。
本書の読みどころはふたつある。一つが原発問題。もうひとつが、検察の捜査と取り調べの問題。著者は、自由民主党から出ていて、原発にも反対していない。彼がひたすら励んで来たことは県民の生活を守るための働きだった。だから、知事になってから、県民のために、まじめに福島原発の勉強をはじめている。自身の足取りを記すうちに、それは自然と記されて行く。原発に関する知識が増えて行く知事。そのあいだにも、事故が起きる、隠蔽する、また事故が起きる、さらに「もんじゅ」の事件も知った、その成り行きを知事は、県民の立場から見つめる。そして悟ったことは、原発は決して消えない、消せない火だ、人が扱える代物ではない、ということだった。しかも県民のためにはならず、東電と国のためだけに存在するものだと理解した段階で「まちがえるな! 敵は国だ!」と声を上げて原発反対の立場を明確にしたのだ。逮捕の動きが発生したのは、この直後のことである。
原発の問題と並ぶ、もう一つの問題は、検察による拷問のことである。どこにも拷問の文字はないが、これは捜査ではなく、取り調べでもなく、まちがいなく拷問である。火攻め水攻めばかりが拷問ではない、むしろ現代にそれはない。標的にした人間の特質を見て、いちばん弱いところを突く。この場合は、人情に厚い性質を利用されて、周囲の人物を痛めつける手でやられたのだろう。
著者は、1939年福島県郡山市生まれ。1983年自由民主党公認で参議院選挙当選、1988年、福島県知事。4回連続当選し、長期にわたり知事を務めた。が2006年に、汚職事件の嫌疑をかけられ辞職、のち収賄容疑で逮捕された。
本書は、著者が郡山に生まれてから今日までの歩みを克明に綴っている。そのなかでの彼の主張は「無実」の一言である。彼自身の無実だけを主張しているのではない、むしろ、周囲の人たちまでもが巻き込まれて、自殺に追い込まれ、自殺を企てた後に、いまもなお意識が戻らない人がいる、そういう多くの「殺された仲間」を抱えての主張である。
私は、冒頭にある「墓碑標」の話に強い衝撃を受けた。墓碑標という、聞いたことのないものが何か、読んでみていただきたい。一昨年、会津に行ったとき、悔しそうに話してくれた女性、ひと冬10万円はかかるんですよ、雪に! そのことも思った。
本書の読みどころはふたつある。一つが原発問題。もうひとつが、検察の捜査と取り調べの問題。著者は、自由民主党から出ていて、原発にも反対していない。彼がひたすら励んで来たことは県民の生活を守るための働きだった。だから、知事になってから、県民のために、まじめに福島原発の勉強をはじめている。自身の足取りを記すうちに、それは自然と記されて行く。原発に関する知識が増えて行く知事。そのあいだにも、事故が起きる、隠蔽する、また事故が起きる、さらに「もんじゅ」の事件も知った、その成り行きを知事は、県民の立場から見つめる。そして悟ったことは、原発は決して消えない、消せない火だ、人が扱える代物ではない、ということだった。しかも県民のためにはならず、東電と国のためだけに存在するものだと理解した段階で「まちがえるな! 敵は国だ!」と声を上げて原発反対の立場を明確にしたのだ。逮捕の動きが発生したのは、この直後のことである。
原発の問題と並ぶ、もう一つの問題は、検察による拷問のことである。どこにも拷問の文字はないが、これは捜査ではなく、取り調べでもなく、まちがいなく拷問である。火攻め水攻めばかりが拷問ではない、むしろ現代にそれはない。標的にした人間の特質を見て、いちばん弱いところを突く。この場合は、人情に厚い性質を利用されて、周囲の人物を痛めつける手でやられたのだろう。