大惨事と情報隠蔽
25-02-18-13:07-
『大惨事と情報隠蔽』Man-made Catastrophes and Risk Information Concealment Case Stugies of Major Disasters and Human Fallibility 副題=原発事故、大規模リコーツから金融崩壊まで 著者=ドミトリ チェルノフ&ディディエ ソネット Dmitry Chernov & Didier Sornette 発行=草思社2017年 サイズ=19cm 560頁 ISBN9784794222954
著者=ドミトリ・チェルノフ チューリッヒ工科大学の「起業家リスク」講座所属の研究者。クライシス・コミュニケーションに力を注いできた。
ディディエ・ソネット チューリッヒ工科大学の、同じ講座を担当する金融学教授。金融危機研究所所長。同大学リスクセンター共同設立者。スイス金融研究所のメンバー。
内容=今までに起きた大惨事を分析して、それらの共通項を明らかにしている。その中で、リスクの無視、非共有、隠蔽を起こす組織の特徴を探る。
原発事故や原油流出などの工業分野の大事故だけでなく、軍事的失敗、感染症大流行などの社会的事件、自動車の大規模リコールや医療製品不正製造などの消費者問題、銀行破綻や金融崩壊などの経済危機分野まで幅広く事例を検証している。
感想=世界中の大事件の中から選んだ大事件について検証している。
取り上げた事件の発生時期は、最も古いものが1918年のスペイン風邪で、以後現在までを扱っている。しかし知らない事件がいくつもあった。
知らない事件だな、と読んでみると、あっ この事件はニュースで見た、というものがたくさんあった。
一方、渦中にあった福島大地原発事故、水俣。そしてトヨタのリコール事件については、当事国の住人としての体感温度と個人的感情を抱えているゆえに、本書の冷静、客観的な見方に助けられた。
第2部で行われる詳細かつ客観的な24例の事実確認と検証・分析を読むと、目を見張るような共通項が洗い出されたことがわかる。
なぜかを検証する3部が興味深く、かつ有益だ。
最も緊張感を持って考えたいのが第4部で、現在リスク情報が隠蔽されている可能性がある事例としてあげられている4つ、
すなわち1、アメリカのシェールガス開発 2、遺伝子組換え生物、3、アメリカの政府債務と中国のGDP 、4、ソフトウェア産業の脆弱性。
この四つに対して、間断なく注視し、さらに深く知るように努力し、身構えなければならないと感じた。
最後の5部で、たった3件の情報管理の成功例が挙げられる。
この3件とは、トヨタ生産方式、ソニーのバッテリ・リコール問題、セベソ事故である。
ここに2件の日本関連が挙げられたことに、希望の光を見たい。
本書は、企業リスクの専門家による緻密で地道な研究。
巻末にメールアドレスが添付されており、読者からの意見などを受け入れている。
1900年代から現在までの大事故の着実な展望と冷静な検証、さらに将来に向けての考察は、前向きに進む姿勢で意欲的だ。
読後、各々の思考を進める役にたつ良書。
その他、よかった部分
各章の冒頭に一言が載っているので、紹介します。
⭐️ドン・コルレオーネは、悪い知らせほど早く知りたがる。映画ゴッド・ファーザー ⭐️罪もごまかしも、たくらみも詐欺も悪も、すべて見えないところでひっそりと生きているものだ。ピュリッツアー ⭐️賢者は歴史から学び、愚者は経験から学ぶ。ビスマルク
⭐️歴史は繰り返すのではない、韻を踏むのだ。マーク・トウェイン
もう一つ、本文デザインが良い。本書は流し読みをして閉じる種類の本ではなく、振り返り、前に戻り、あるいは先を見るなど検証する価値のある内容なので、こうしたユーザーの側から計らい作られている。柱の位置、サイズ、デザインなど細かいところまで行き届いている。
著者=ドミトリ・チェルノフ チューリッヒ工科大学の「起業家リスク」講座所属の研究者。クライシス・コミュニケーションに力を注いできた。
ディディエ・ソネット チューリッヒ工科大学の、同じ講座を担当する金融学教授。金融危機研究所所長。同大学リスクセンター共同設立者。スイス金融研究所のメンバー。
内容=今までに起きた大惨事を分析して、それらの共通項を明らかにしている。その中で、リスクの無視、非共有、隠蔽を起こす組織の特徴を探る。
原発事故や原油流出などの工業分野の大事故だけでなく、軍事的失敗、感染症大流行などの社会的事件、自動車の大規模リコールや医療製品不正製造などの消費者問題、銀行破綻や金融崩壊などの経済危機分野まで幅広く事例を検証している。
感想=世界中の大事件の中から選んだ大事件について検証している。
取り上げた事件の発生時期は、最も古いものが1918年のスペイン風邪で、以後現在までを扱っている。しかし知らない事件がいくつもあった。
知らない事件だな、と読んでみると、あっ この事件はニュースで見た、というものがたくさんあった。
一方、渦中にあった福島大地原発事故、水俣。そしてトヨタのリコール事件については、当事国の住人としての体感温度と個人的感情を抱えているゆえに、本書の冷静、客観的な見方に助けられた。
第2部で行われる詳細かつ客観的な24例の事実確認と検証・分析を読むと、目を見張るような共通項が洗い出されたことがわかる。
なぜかを検証する3部が興味深く、かつ有益だ。
最も緊張感を持って考えたいのが第4部で、現在リスク情報が隠蔽されている可能性がある事例としてあげられている4つ、
すなわち1、アメリカのシェールガス開発 2、遺伝子組換え生物、3、アメリカの政府債務と中国のGDP 、4、ソフトウェア産業の脆弱性。
この四つに対して、間断なく注視し、さらに深く知るように努力し、身構えなければならないと感じた。
最後の5部で、たった3件の情報管理の成功例が挙げられる。
この3件とは、トヨタ生産方式、ソニーのバッテリ・リコール問題、セベソ事故である。
ここに2件の日本関連が挙げられたことに、希望の光を見たい。
本書は、企業リスクの専門家による緻密で地道な研究。
巻末にメールアドレスが添付されており、読者からの意見などを受け入れている。
1900年代から現在までの大事故の着実な展望と冷静な検証、さらに将来に向けての考察は、前向きに進む姿勢で意欲的だ。
読後、各々の思考を進める役にたつ良書。
その他、よかった部分
各章の冒頭に一言が載っているので、紹介します。
⭐️ドン・コルレオーネは、悪い知らせほど早く知りたがる。映画ゴッド・ファーザー ⭐️罪もごまかしも、たくらみも詐欺も悪も、すべて見えないところでひっそりと生きているものだ。ピュリッツアー ⭐️賢者は歴史から学び、愚者は経験から学ぶ。ビスマルク
⭐️歴史は繰り返すのではない、韻を踏むのだ。マーク・トウェイン
もう一つ、本文デザインが良い。本書は流し読みをして閉じる種類の本ではなく、振り返り、前に戻り、あるいは先を見るなど検証する価値のある内容なので、こうしたユーザーの側から計らい作られている。柱の位置、サイズ、デザインなど細かいところまで行き届いている。