文房 夢類
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独身者の住まい

独身者の住まい』 著者 竹山 聖(たけやま せい)発行 廣済堂出版 2002年 ISBN4-331-50910-9 C0052 ¥1500E 128x187 P304

著者は1954年大阪生まれ建築家。作品は「Blue screen house 自邸」「周東町パストラルホール」「山本寛斎本社ビル」など 1992年から京都大学助教授
およそ10年前に書かれた本。最近注目されている「お一人様」向けの内容ではない。独身者の定義からして、著者の思う独身者は、一種独特な像である。
目次を拾ってみよう。1 歴史がかわる 2 精神的独身者の時代 3 在庫としての独身者 4 アンチファミリー 5 ひとり住まいのメリット
6 ニセモノの街 7 データが示す未来 8 自由の領分 9設計をとおして学んだこと 10 住まいは整地である。 以上のあと、巻末に独身者の住まいの十か条や、図版、京都大学の竹山スタジオなどがある。
のびのびと書いたエッセイ集。映画の話になり、世相の話題に飛び、しかし常に建築に舞い戻る。基盤が建築に置かれているので、安心してつきあい、ほかの話題につき合っていてもやっぱり著者とともに考えを深めるのは、住まいについてである。それも独身者の住まい限定。
連れ合いに先立たれ、息子、娘は家を出て暮らし、ひとりぼっちになってしまったひとり暮らしではありません。能動的独身者が、ここで想定されている対象であって、心身ともに独立した人間、しかも孤立とは無縁な人間の住まいなので、むきだしになるのは、そこに住む人の個性だろう。
いま、私の家の周辺で起きている現象は、空き部屋になった子供部屋が物置部屋と化し、ほとんど風も通さない暗い部屋となっている家々。ふだん使っているのは、お勝手とリビング、慣れた寝る場所。トイレと風呂場。これは、どうみても楽しくないなあ。もったいないし。
高速回転で変化する現在の状況の中にいて、このようなタイプの独身者は、多くはないがかならず、つぎつぎに生まれるだろう。核家族が、日本のごく一般的な姿なんだ、ととらえて信じているのが、大手の建築会社であって、それはいまも売れ続けているけれど、終わりが見えてきているんじゃないか。この本は、10年も前に、このことを指摘している。自分でしかあり得ない自分が、自分らしく自由にいられる場をつくろう。これは言うのは簡単だけれど、実は簡単にできることではなくて、まずは独立した精神の人間あってこその論議でしょう。

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